太陽光発電 成長の夏 ピーク時 原発12基分 本紙8社調査 シェア6%台に  

 今夏に電力需要がピークを迎えた時間帯にどう電力が確保されたか電力各社に取材したところ、太陽光発電が原発十二基分に当たる計一千万キロワット超の電力を生み出し、供給を支えていたことが分かった。二年前は供給力の1%にすぎなかった太陽光は、6%台に急伸。九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)が今月再稼働するまで約一年十一カ月にわたり国内の「原発ゼロ」が続いた間に、太陽光が欠かせない電源に成長したことが明確になった。(山川剛史、荒井六貴、小倉貞俊)

 本紙は、原発のない沖縄電力を除く全国の九電力会社に、今年七~八月の電力需要ピークの時間帯に、電源構成がどうなっていたのかデータ提供を求めた。四国電力は提供を拒否したが、八社が回答した。
 地域によってピークの日や時間帯は若干異なるが、八社が需要を見越して準備した供給力の合計は約一億六千六百万キロワット。首位は火力発電で、約一億二千六百万キロワット(75・4%)と圧倒的に多い。二位は、くみ上げておいた水を需要に応じて放水する揚水発電で約千八百万キロワット(10・9%)、三位は水力発電の約千二百万キロワット(6・9%)。
 太陽光発電は僅差で続き、千百万キロワット弱(6・5%)。川内原発の出力は一基八十九万キロワット。約十二倍の電力を生み出していたことになる。政府の事前予測は五百万キロワット前後だったが、大きく外れた。再生エネルギーの固定価格買い取り制度がスタートしてからの三年で、中心的な存在になった。
 需要が高まる日中、軌を一にするように発電するのが太陽光の特質で、割高な石油火力の稼働を最小限にできる効果もあった。
 地域別では、太陽光の発電量は東京電力管内が四百万キロワットと最も多かったが、発電割合では九州電力管内が9・5%と最も高かった。九州では今夏、ピークが通常とは異なり、日射量が減り始める午後四時だった。もしピークが一般的な昼前後であれば、発電量は二~三倍だった可能性が高い。
 九電は八月十一日に川内原発1号機を再稼働させたが、その前から電力の需給バランスは余裕のある状態が続いていた。中部電力などから電力融通を受けていたこともあるが、九州では太陽光の導入量が非常に多く、そのサポートで安定が保たれていたともいえる。

(メモ)固定価格買い取り制度

 太陽光や風力、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギーでつくられた電気を、国が設定した価格で一定期間、電力会社が全量買い取るよう定めた制度で、2012年7月にスタートした。買い取り費用は電気料金に上乗せされるが、太陽光パネルの価格低下などに伴い、買い取り価格は段階的に下げられている。導入量は、設置が容易な太陽光に集中しており、家畜のふんや木材チップなどを活用し、出力調整が容易なバイオマスがあまり伸びないなどの問題もある。

割高な石油火力抑制 不安定さ課題 電力融通広域化を

 発電量が不安定だ、発電コストが高いと電力会社などから批判されてきた太陽光発電だが、今夏の需要ピーク時にどう電力をまかなっていたのかを調べると、太陽光が欠かせない役割を果たしていた。より確かな存在になるためには、乗り越えなければならない課題が残るのも事実。どうすればよいのだろうか。
 「急な雨などで太陽光発電が使えないときに備え、火力発電の出力をいつでも上げられるよう待機させている。その調整が難しい」
 本紙の取材に、東北電力の担当者は、太陽光の実力は認めつつ、対応の苦労をこう語った。
 夏季の電力需要は昼前後だけでなく、夕方にもぐんと増えることが多い。関西電力の担当者は「夕方は太陽光が斜めになって発電量が落ちる」と話し、太陽光に頼れなくなった分は、火力の出力を上げるなどの対応が必要と説明した。
 同社のケースでは、正午~午後一時には百七十万キロワットもの電力が各地の太陽光発電所から送られていたが、午後四時には約三分の一の六十万キロワットにまで落ち込んだという。太陽光の出力はパネルが受ける直射日光の量に左右されるため、波があるのは避けられない。
 ただし、電力会社にとっても太陽光の台頭によるメリットは少なくない。膨らむ電力需要の相当部分を太陽光がカバーしてくれるため、火力の中でコストの高い石油火力をフル稼働させなくて済むからだ。
 ある電力会社の分析資料を見ると、今夏は、朝から夕方まで石油火力の発電量が明らかに減っている。二酸化炭素の発生量も少ない上に、電力会社は費用面でも助かっている。
 資料は、揚水発電の活用方法が変わったことも記している。未明から早朝の電力がだぶついている時間帯に、ポンプで上の池に水をくみ上げ、ピーク時に水を下の池に落として発電する方式だ。
 これまでは日中、火力と水力で足りない分を補うやや消極的な使い方だったが、今夏は、夕方になって太陽光が減る分をしっかりカバーし、石油火力の出番を必要最低限に抑える積極的な使い方に変わっている。
 もちろん太陽光に課題は残る。天候に左右され、冬は日差しが弱いため発電量も半減し、雪が積もればゼロになる。北海道では、電力ピークは夏ではなくむしろ冬だ。
 エネルギー政策に詳しい都留文科大学の高橋洋(ひろし)教授(公共政策論)は「太陽光だけでなく、豊富な森林資源を活用したバイオマスや風力、地熱などが増え、バランスがとれてくれば解決できる。再生エネルギーが主力になってきた欧州のように、もっと再生エネの比率を高めることも可能だ」と話す。
 現在は電力会社ごとの小さなエリアで需給を合わせる前提になっているが、欧州では国境を越えて電力をやりとりしている。高橋教授は、電力ネットワークの広域的な運用や、天然の蓄電池である揚水発電のさらなる活用が再生エネ普及の鍵を握るとみている。
 大きなネットワークになるほど、ある地域が曇っていても、別のどこかは快晴で順調に発電中、風車も回っている…といった具合に不安定さが減っていく。
 日本でも、東西の周波数を変換する能力を強化し、全国的に電力融通を進める努力が進む。家庭用も含め安価な蓄電池が登場する気配も出てきている。

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