飯舘村の山 除染手つかず  山菜 高濃度セシウム 品種ほとんど基準超 2地区 本紙測定  住民「元の暮らしに戻れぬ」

 東京電力福島第一原発事故で汚染された福島の山は今、どうなっているのか。本紙が飯舘村の山で採取した山菜の放射性セシウム濃度を測ると、種類によってばらつきはあるものの、ほとんどが食品基準の濃度を超え、安心して食べるには程遠い現実があった。国は、宅地や農地を除染して住民の帰還を促そうとしているが、調査に同行した地元の男性は「村民にとって山は大切な生活圏。宅地や田畑を除染しただけでは暮らせない」と訴えている。(大野孝志)

特に注意が必要のコシアブラ

 今年四月上旬から五月上旬にかけて、村にある民間農業研修所の管理人、伊藤延由さん(71)とともに、飯舘村南東部の小宮、蕨平(わらびだいら)両地区の山に入り、複数種類の山菜と土壌を採取した。両地区は昼間だけ立ち入りできる居住制限区域。
 山菜は普段食べる葉や茎を水洗いし、水分を拭き取った後に刻んで測定用の容器に詰め、独協医大のゲルマニウム半導体検出器で四~八時間計測した。土壌も同じ検出器で四時間ほど測った。
 結果は図の通り。てんぷらなどで食べるコシアブラの葉は、一キログラム当たり一万四〇〇〇~二七万ベクレルだった。食品基準(同一〇〇ベクレル未満)の一四〇~二七〇〇倍に当たる。

育つ土壌は1万ベクレル超

 コシアブラは、セシウムの大半があるとされる地中の浅い部分に根を張るため汚染されやすいといわれていたが、その通りだった。根が張っている深さ五センチほどの腐葉土を調べると一万ベクレル以上だった。
 ほぼ同じ深さで根を張り、てんぷらやおひたしで食べることが多いコゴミやワラビ、フキノトウも汚染の度合いに差はあったが、食品基準を超えるセシウムが検出された。一方、深さ一〇~一五センチで根を張る山ウドは、表土が一万二〇〇〇ベクレル以上あるにもかかわらず、四三~一一九ベクレルと意外なほど低かった。
 与党は五月、避難者の帰還を促すため、居住制限区域と避難指示解除準備区域の避難指示を二〇一七年三月までに解除するよう政府に提言。宅地や農地の除染は進むが、山の除染は山崩れを招く恐れもあり、国は「今後、調査結果を踏まえて方法を検討する」としている。
 福島市の仮設住宅と村を行き来し、独自に山菜やキノコの汚染を調べ続けてきた伊藤さんは「村の人たちは日常的に山菜を食べてきた。村民が戻っても、元の暮らしは取り戻せない。国や東電は、人がここで生きていけるかどうかを念頭に置いて、物事を考えてほしい」と話した。

山ウドを採取する伊藤さん(右)と木村准教授=5月6日、福島県飯舘村で

根が浅いほど濃縮

 調査に参加した独協医科大学の木村真三准教授(放射線衛生学)の話
 根を浅く張る山菜ほど、腐葉土から放射性物質を吸収して濃縮する。すべての山菜が食べられないわけではないが、国が指定する出荷制限区域では採らないことが肝心だ。最も安全なのは、食べる前に放射性物質の濃度を測ることだ。


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