約束ほご 九電に不信 規制委「免震棟撤回、根拠を」 川内・玄海原発

 九州電力が、川内(せんだい)原発(鹿児島県)の事故時の重要な対策拠点となる免震重要棟の建設計画を撤回したことに、原子力規制委員会の不信感が強まっている。二十六日には、計画変更の具体的根拠を示すよう指示。経済性を優先し、新基準による審査で約束した計画を反故(ほご)にする姿勢に、他の原発を抱える自治体からも批判が広がっている。 (原発取材班)

九電、玄海原発の「免震」も変更へ

 免震重要棟は、東京電力福島第一原発事故で現地対策本部として使われ、東電幹部たちが「この施設がなければ、どうなっていたか分からない」と明言した施設だ。テレビ会議で本店や政府と対策を協議し、作業員たちは爆発の恐れが高まった時などに一時退避、体を休める場ともなった。
 新基準では、緊急時に要員を守る拠点の設置が義務づけられた。九電は今年三月末までに、約六百二十平方メートルの対策所を備えた延べ床面積六千六百平方メートルの免震重要棟を建設する方針を審査申請書にも明記。再稼働(昨年八月)には施設完成が間に合いそうにないため、必要最低限の機能を備えた百七十平方メートルの代替施設でしのぐ方針を示した。
 狭い上に、トイレやシャワーは仮設などの問題点を抱えていたが、規制委は基準は満たしているとして、二〇一四年九月に審査をパスさせた。
 この時点では、九電は約束通り、1、2号機から四百メートルほど離れた森を切り崩し、建設用地の造成に入っていた。本紙も同年十月、現地で造成が急ピッチで進んでいることを確認した。しかし、昨年八月に1号機、十月に2号機が再稼働した後は、免震重要棟計画はひそかに後退していた。
 同十~十一月、本紙が九電に工事がどこまで進んだかチェックの取材を入れると、担当者は「再検討している」と言い始めた。その後の昨年十二月、九電は突然、免震棟建設計画撤回を表明。「費用面も全く無関係ではない」と話した。
 九電から計画の補正申請を受けた一月二十六日の審査会合では、九電は、新規の免震重要棟より、経験ある耐震建造物を新造し、代替施設と組み合わせて使う方が「早く安全性を向上できる」と強調した。
 しかし、規制委の更田豊志(ふけたとよし)委員長代理から「どれくらい早くなるのか」と問われると答えられず、更田氏から「(計画を変える)動機の説明がなく、最も重要な根拠を欠いている」と指摘された。他の規制委担当者からも、計画変更を申請し直すことも視野に、入念に検討した上で対応するよう指示された。
 九電は、審査中の玄海原発(佐賀県)でも、今年三月完成予定の免震重要棟の新設計画を見直す考えを表明。佐賀県の山口祥義(よしのり)知事は「免震棟は重要だ。(九電は)信頼関係を築くためにも、自らやると言ったことはやるべきだ」と述べている。

その後…。規制委は結局、従来型の耐震施設でOK

 規制委は厳しい態度で臨むように見えたが、九電の説明を受け入れ、従来の耐震構造の事故対応拠点でよいとの判断に傾いた。
 九電の主張は、「免震構造では想定する地震動をクリアしにくいため、従来の耐震構造の方が早く、新基準の要求を満たすことができる」という趣旨だった。

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