原発比率 議論深まらず さいたまで初の聴取会 持論のみ 意見交換なし

 将来の原発比率はどれくらいがいいのか、政府のエネルギー・環境会議が国民の意見を聴く会が十四日スタートした。初回はさいたま市で開かれ、抽選で選ばれた九人が、政府が提示した二〇三〇年時点の原発比率(1)0%(2)15%(3)20~25%の三案に関して意見を述べた。「国民的議論を深める」ことが目的とされるが、政府側との意見交換もなく、各自が言い分を主張しただけで終わり、議論は深まらないまま終わった。

政府が初めて開いた意見聴取会=14日午後、さいたま市で

空港並みの厳戒警備のなか実施

 意見聴取会は、この後、仙台、名古屋、札幌、大阪、富山などに会場を移し、来月四日まで続く。初回のこの日は、さいたま新都心合同庁舎の講堂に、事前に登録した約百七十人が集まった。入り口は、空港の手荷物検査場並みの警戒ぶりだった。
 発言者九人の選び方について政府は、登録時に意見概要を添えて申し込んだ発言希望者から「コンピューターによる抽選で選んだ」とし、それ以上の詳しい説明はしなかった。九人はそれぞれが八分以内で考えを述べた。
 青森県むつ市出身で埼玉県川口市の会社員田村久美子さん(48)が「人類は核を制御できない。ふるさとを奪わないで」と原発0%案を支持すると、会場からは大きな拍手が上がった。一方、電気の安定供給を重視する声も少なからずあり、同市の元エンジニア松田平生(ひらお)さん(66)のように「原発50%のシナリオがあってもよい」と訴える意見もあった。
 九人の意見が出そろった後、もう一度補足的に意見を言う機会もあったが、持ち時間はわずか一人二分間。発言者の間で意見を交わすこともなく、持論を繰り返して終わった。
 その後、エネ環会議副議長として出席していた枝野幸男経済産業相が「異なる意見を同時に聴けたことは想像以上に意味があった」とあいさつした。
 発言の機会がなかった傍聴者の女性が、枝野氏に向かって大声で運営方法に対する不満を述べると、司会者は構わず閉会させようとした。会場は騒然となりかけ、枝野氏は「ご意見は真摯(しんし)に受け止めます」と引き取り、第一回の意見聴取会は終わった。
 運営を請け負っているのは大手広告代理店の博報堂で、発注者の経産省資源エネルギー庁は契約額を明らかにしていない。

パブコメで政府動かせ 意見公募への参加広がる

 政府が「国民的議論」を踏まえて決めるとしている将来の原発比率について、誰でも意見を出せる手段が、政府の意見公募(パブリックコメント=パブコメ)だ。市民の間に「たくさんの意見が集まれば、政府も無視できない」と、その活用を訴える動きが広がっている。
 インターネットの交流サイト・フェイスブックに開設された「原発ゼロの未来をつくる。国民的議論の場 NO NUKES」のページは「デモもいい、今ならパブコメがもっといい」と意見送付を呼び掛ける。一週間で延べ六万人以上がアクセスし、これをきっかけに「パブコメを送った」というサイト内の書き込みも多い。
 立ち上げたのは、環境政策が専門の大学教員や映像作家ら四人。ページでは、政府が示した三つの選択肢のみではバランスを欠くことや、国民の意見をどう政策に反映させるのか政府が明示していないなどの問題点も指摘している。
 「形だけの国民参加にしてはいけない。まず問題を知り、自分の意見を形成して届け、結果も見てほしい。それが政治を変える力になる」。開設者の一人で東邦大の朝倉暁生准教授はそう強調する。
 脱原発を掲げる他のグループもネットなどでパブコメの活用を盛んに呼び掛けている。十六日に東京・渋谷の代々木公園で開かれる「さようなら原発10万人集会」でも、参加者に送付用紙が配られる予定だ。
 政府は当初今月末だった募集締め切りを、八月十二日に延長した。「主にホームページ(HP)経由で、少なくはない数が寄せられている」と担当者。パブコメはエネルギー・環境会議のHPでの入力か、ファクス、郵送の三方法で出せる。

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