原子力教育支援事業 6割以上一者応札 官僚、電力OBら理事 公益法人7団体

 小中学校や高校での原子力教育を支援するため、文部科学省と経済産業省資源エネルギー庁が二〇〇九~一〇年度に一般競争入札で教材作成などを委託した十七事業のうち、六割以上が一者応札で、落札したのはすべて官僚OBか電力会社の現・元役員が理事などを務める公益法人だったことが分かった。原発の安全性を紹介する教材の作成など、推進色の強い事業が「原発ムラ」の中で独占されていた。

原資は電気料金の一部

 本紙が情報公開請求で入手した入札資料によると、十七事業は入札価格と技術点で落札者を決める総合評価落札方式を採用。二年間で文科省は十三事業、エネ庁は四事業を計約十億円で委託した。
 このうち十一事業の応札は一者だけで、事実上の無競争だった。委託先の公益法人は計七団体。原子力ポスターコンクールや原子力教育を支援するホームページの作成など、最多の七事業を日本原子力文化振興財団(東京)が受注した。
 振興財団の役員名簿には、東京電力の清水正孝前社長や、関西電力の八木誠社長ら電力会社役員が非常勤理事に名を連ねている。
 放射線測定器を学校に貸し出す事業は両年度とも日本科学技術振興財団(同)が落札。ここには文科省などの官僚OB三人が天下っている。
 小中学校向けの副読本の作成は、旧通産省(現経産省)事務次官が理事に天下る日本生産性本部(東京)が〇九年度に受託。原発について「大きな地震や津波にも耐えられる」と記載しており、福島第一原発事故後の今年四月、当時の高木義明文科相が「事実と反した表現は見直す」と修正を表明した。同省は今後、放射線教育を重点化する方針だ。
 委託事業の原資は、電力会社の販売電力に応じて課税される電源開発促進税。電気料金に上乗せされており、最終的には消費者が負担している。
 委託先が特定の公益法人に集中していることについて、文科省原子力課の担当者は「一般論として、どのような価格で入札するかなどは企業力の問題であって、民間か公益法人か、(官僚)OBがいるかいないかとは無関係では」と説明。「競争原理は働いている。入札説明書などの説明は丁寧に行っていると思うが、より分かりやすくを心掛けている」と話している。

推進ありきの教育事業 賛助会費で潤う財団 低額入札民間阻む

 原発のイメージアップを図る原子力ポスターコンクール、原発を推進する経済産業省資源エネルギー庁の職員らによる教員研修-。原子力教育を支援する国の委託事業は、原発の「安全神話」や推進側の言い分を紹介する内容がずらりと並ぶ。請け負っていたのは、すべて官僚OBが天下っていたり、電力会社の息が掛かっていたりする「原発ムラ」の公益法人だった。(福田真悟)
 「5重のかべで安全を守る発電所」「さまざまな分野で役立つ放射線」「地球にやさしい原子力発電」。小中学生や高校生らを対象に、文部科学省とエネ庁が二〇一〇年に主催した原子力ポスターコンクールの募集要項には、ポスター作りの参考として原子力のメリットを強調する言葉が並ぶ。だが、福島第一原発事故で浮かんだ原発の危険性には、まったく触れていない。
 コンクールを受注したのは日本原子力文化振興財団。同財団によると、コンクールが始まった一九九四年度から〇六年度まで毎回、随意契約で受注。一般競争入札となった〇七年度以降も、二回を除いて受注してきた。
 財団理事には、東京電力前社長や関西電力社長らが名を連ねる。賛助会員は電力会社や原発メーカーなど約六十団体で、昨年度はこうした団体から約四億五千万円の会費収入があった。収入全体の四割近くに上り、その名の通り、原発関連の企業が原発推進を盛り上げるための財団だ。
 神奈川県で社会科を教える高校教諭は「影響を受けやすい子供たちに、こんな参考例を見せてポスターを作らせるのは教育上問題では」と懸念する。
 第一原発の事故を受け、本年度のコンクールは中止され、来年度も見送られた。文科省は来年度から「放射線の正しい理解」を重点的に進めるとしているが、教諭は「本当に公平な立場でやるのか不安がある」と話す。
 昨年八~十一月、全国九カ所で開かれた教職員対象の原子力・放射線セミナー。こちらも文科省とエネ庁が主催し、エネ庁の職員らが講師となって原発の安全性や必要性を解説した。
 情報公開請求で開示された入札資料によると、十七事業のうち十一事業は一者だけの応札。残る六事業も「原発ムラ」の公益法人が受注していた。
 〇九年度にポスターコンクールの入札に参加した民間会社の担当者は、振興財団の落札額の低さに驚いた。財団のように会費収入がないため、採算を考えれば、どう見積もっても財団のような金額は提示できないからだ。
 〇九年度は民間から四社が入札に参加したが、とても無理だと判断したのか、一〇年度は振興財団の一者応札になっていた。

関連記事