原子力規制委 不安抱え船出  判断 「政府が責任を」  40年廃炉 「妥当な期間」  再稼働 需給考慮せず

 新たに原子力の規制機関として、原子力規制委員会が十九日に発足した。二〇三〇年代に原発ゼロを目指すとした政府は、カギとなる「再稼働」「四十年廃炉」などは規制委任せ。これに対し、田中俊一委員長は「政策判断はしない」と科学的、技術的なこと以外は考えない姿勢を示した。だれが判断して責任を負うのか不透明な中で、原発ゼロへの道筋は見通せない。(小野沢健太、清水祐樹、加賀大介)

左から、大島委員、更田(ふけた)委員、田中委員長、島崎委員、中村委員

◆判断 「政府が責任を」

 「法律に従って、規制委が判断する」。新たなエネルギー戦略を出した後、枝野幸男経済産業相や古川元久国家戦略担当相らは、ことあるごとに、このせりふを繰り返す。
 安易に再稼働が認められ、運転開始から四十年以上の原発も延長が認められ、新たな原発の稼働も認められるとなれば、新戦略はただの紙切れになる。それなのに、政府の対応は規制委任せだ。
 この日の記者会見で、田中氏は「それもどうかと思う」と苦笑。他の委員四人も「安全かどうかを判断する。それだけ」「必要性やエネルギー需給にはとらわれない」などと、政府が原発ゼロ方針を決めた以上、実現に向けた判断は政治が責任を持つべきだとした。新増設に関しても、田中氏は「申請があって審査を求められれば、規制委は対応する。その義務はある」と話したが、その前の判断は政府の責任だとの認識を示した。

◆40年廃炉 「妥当な期間」

 原発ゼロは老朽化した原発がなくなっていかないと進まない。
 既に日本原子力発電敦賀1号機、関西電力美浜1、2号機の三基が運転開始から四十年を超えている。田中氏は「四十年は技術の寿命としてはそこそこ。当時の技術者らも卒業していく」と妥当な方針との認識を示した。
 最新の安全対策を満たさないと運転を認めないバックフィット制度も導入され、「四十年前の原子炉は現在の基準からすると、必ずしも十分でない。事業者が二十年の運転延長を求めてくるのか。相当困難だ」と述べ、電力会社の判断で、廃炉は進んでいくと楽観的な見方を示した。
 その一方で田中氏は「四十年を超えても、安全性に問題なければ規制委としてはOKを出す」とも話し、敦賀1号など三基の廃炉については「予断を持って申し上げられない」と言葉を濁した。

◆再稼働 需給考慮せず

 この日の田中氏の会見で、少ないながらも明確になった点は、当面は原発の再稼働はないということだった。冬場には北海道で電力が足りなくなるなどと、再稼働圧力も聞かれるが、田中氏は「電力需給などの地域事情や政治的問題は考慮しない」と言い切った。
 事故が起きた際、作業員らの現場拠点となる免震施設を備えていない原発が多く、原発外でも避難計画の見直しや、対策拠点となるオフサイトセンターの移転など防災対策の見直しが進んでいないことを挙げ、これらの条件が整ってこないと、再稼働は認めないとの姿勢を強調した。
 ただ、全ての対策が整う必要があるかに関しては、「総合的に判断したい」と言葉を濁した。政府は、原発を「重要電源として活用する」との方針を示しており、ある程度まで防災対策が進めば、再稼働が相次ぐことは十分にあり得る。

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