使用済み核燃料 プールの満杯迫る 対策は一時しのぎばかり

 原発の最大の弱点は使用済み核燃料の問題だ。再処理して混合酸化物燃料(MOX燃料)に再生しても、「プルサーマル発電」に利用する計画が立てられないのが実情。核のごみが減るわけでもなく、核燃料の処理・処分の見通しもないまま、原発を稼働してきた。政府が示した新たなエネルギー戦略も、再稼働を進めつつ、再処理は続け、原発ゼロを進める、という矛盾だらけの内容だ。(社会部・清水祐樹、福田真悟)

◆貯蔵は? プールの満杯迫る

 原発は、およそ一年に一度の定期検査が法律で義務付けられている。その際に運転を止め、原子炉内の全核燃料を取り出して、建屋内にある水で満たした使用済み核燃料プールに移し、うち四分の一から三分の一の核燃料を交換する。使用済みの核燃料は長期間、放射線と熱を発し続けるためプールで冷やし続ける必要がある。
 プールに空きがないと、核燃料が移せず、交換できない。原発は動かせなくなる。原発を保有する九つの電力会社と日本原子力発電(原電)に、各原発の号機ごとにプールの容量や、核燃料の交換実績を取材し、プールの空き容量はあと何年で満杯になるかを調べた。
 全国の原発五十基のうち、六割を超える三十三基のプールはすでに満杯に近く、数年分しかなかった。北海道電力泊3号機(北海道)や四国電力伊方3号機(愛媛県)といった比較的新しい原発は、まだプールに空きが多く、ほかの号機の使用済み核燃料も入れられるようにしている。ただし、プールを共用すると、残り年数が短くなる。
 各社はこれまで、青森県六ケ所村で建設中の再処理工場の貯蔵プールを活用してきたが、既に容量の97%以上が埋まっている。同県むつ市では、十分に冷えた使用済み核燃料をキャスクといわれる空冷式の専用容器に入れ、置いておく中間貯蔵施設が、来年の完成に向け建設中だが、これは共同出資している東京電力と原電のための施設だ。
 その他の電力会社はこうした施設を持たない。むつの施設の場合、計画からほぼ完成するまでに十二年を要している。他社が仮に今から造ろうとしても、生易しいことではない。プールに十二年分以上の余裕があるのは、泊3号機、伊方3号機のほか九州電力川内1号機(鹿児島県)の3基のみ。それ以外の原発は、使用済み核燃料の問題により、遠からず動かそうにも動かせなくなるのが現実だ。

◆対策は? 一時しのぎばかり

 電力会社はたまり続ける使用済み核燃料の置き場を何とか確保しようと必死だが、どれもその場しのぎにすぎない。
 東京電力福島第二1~4号機(福島県)や中部電力浜岡3号機(静岡県)などは、貯蔵プールに設計当初より多くの使用済み核燃料を入れている。核燃料の収納容器の間隔を狭め、詰め込んだためだ。この手法は国の許可が必要だが、新たに施設を造らなくてすむため、各地の原発で実施されている。
 しかし、熱を発し続ける使用済み核燃料の間が近すぎると、プール内の温度が上がりやすくなる。収納量が多くなれば、事故時の危険度も増す。電力会社は、収納容器の材質に核分裂を抑えるホウ素を混ぜることで安全性をPRしているが、とても十分な対策とは言い難い。
 二〇一一年の東電福島第一の事故を受け、国も安全基準を見直し始めた。九州電力は一〇年、玄海3号機(佐賀県)のプールの収納間隔を狭める許可申請をしたが、いまだに認められないままだ。
 冷えた使用済み核燃料をプールから出し、キャスクという金属製の専用容器に移す方式に取り組む電力会社もある。
 水ではなくて空気で冷やすため、管理しやすいとされるが、核燃料が十分に冷えるまで最低でも四年はプールで冷やす必要がある。原発の敷地内で管理するこのキャスク貯蔵が、国内で始まったのは一九九五年と歴史は浅い。
 プールの残り容量が二年半分もない原電東海第二(茨城県)では既に導入済み。キャスク新設も予定し、三年分ほどはプールに余裕が生まれる。福島第一原発でも、廃炉にする4号機の使用済み核燃料を受け入れるため、別棟の共用プールにある核燃料をキャスク貯蔵する。
 一時貯蔵の策として関心は高まっていて、むつ市に建設中の中間貯蔵施設もこの方式だ。
 ただ、これらの対策は結局、「当面」の置き場を確保するのが目的。根本的な解決策にはならない。

◆再処理は? めど立たぬ利用法

 政府や電力会社は、ウラン資源の節約と、核のごみ抑制のためとして、使用済み核燃料を再処理して再利用する核燃料サイクル政策を推進してきた。これまでに十兆円以上の巨費を投じたが、こちらも袋小路に迷い込みつつある。
 仮に再処理工場と核燃料工場が完成し、国内で再処理後に出るプルトニウムを使ったMOX燃料への加工までできることになっても、MOX燃料の使い道と、放射性廃棄物の最終処分の問題は見通しが立たない。
 確かに、再処理が進んで原発のプールから核燃料が運び出されれば、プールに余裕ができて電力会社は助かる。だが、MOX燃料に再生しても、毒性の高いプルトニウムを使ったMOX燃料によるプルサーマル発電へのハードルは、かなり高い。
 MOX燃料にせず、取り出したプルトニウムを粉末の形にしておくという手もあるが、今度は核爆弾の材料になるようなものをなぜ保有するのか、国際社会からの批判にさらされる。
 再処理後の扱いをどちらにするにせよ、数分で人を死に追いやる高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)のほか、使い道がない上に放射線も強い燃え残りのウランをどうしていくか、という問題はそのまま残る。
 核のごみをめぐっては、「研究者の国会」とも呼ばれる日本学術会議ですら、二年も議論を続けたのに有効な策を見いだせなかった。そして、たどり着いた結論の一つが、「原子力政策の方針を決めた後にごみ問題を考えるのではなく、ごみ問題を考慮に入れて原子力政策を決めるべきだ」。
 政府の新エネルギー戦略は、原発ゼロを唱えつつ、こうした提言は素通りした。このままでは、原発をめぐる矛盾はたまり続けるだけだ。

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