疑問抱え再稼働「適合」 川内原発 規制委が審査結果案 被ばく対策徹底されず 火山噴火への対応不備

 原子力規制委員会は十六日の定例会合で、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)が、原発の新しい規制基準に適合しているとの審査結果の案を了承した。新基準を満たすとの初の判断。今後、意見募集を経て正式決定するが、作業員や住民を被ばくから守る策は徹底されておらず、周辺にある火山の大噴火への対応が十分なのかなど疑問が残る。

規制委が入るビル前で、川内再稼働を訴える人たち=16日午前、東京・六本木で

テロ対策では審査非公開

 規制委は昨年七月、新基準の施行と同時に、九電からの申請を受けて審査を始めた。地震や津波、竜巻などの自然災害への備えや、放射性物質を放出する重大事故が起きても影響を少なくする対策を要求。地震・津波の大きさを想定する手法の見直しから求めた。
 九電は、耐震設計の基準となる地震の規模を当初より一割ほど大きく設定し、それでも原発の安全を保つ対策を施したと説明。津波への対策では、もともと川内原発の敷地が海面から十三メートルある上に、海に面した海水ポンプに防護壁を設けたことで、六メートルに想定し直した津波の高さにも対応できるとした。竜巻や森林火災などの対策としては電源車の配備や水源確保などを進め、いずれも規制委は妥当と判断した。
 しかし、航空機を衝突させるテロへの対策については、審査は非公開で進められ、どんな審査がなされたのかは不明だ。
 重大事故時に、放射性物質の放出を千分の一程度にとどめつつ、格納容器内の水蒸気を抜いて圧力を下げるフィルター付きベント(排気)設備の完成は二年後。事故時の作業拠点は当面代用の施設が使われるため、作業から戻った収束要員を除染する設備も不十分なままだ。
 五十キロ離れた桜島を含む姶良(あいら)カルデラなど周辺の火山についても九電は、当面、川内原発に影響するような大噴火はないと楽観的に想定する。
 こうした問題が残されているが、規制委は新基準を満たしていると判断した。
 地元住民の避難計画も、策定するのは国ではなく自治体で、安全に避難できるかどうかの実効性は審査の対象となっていない。
 示された審査結果の案は今後、国民からの意見を一カ月間公募(パブリックコメント)した後、正式に決定される。規制委による現地の検査にパスし、地元自治体の同意が得られれば、早ければ今秋にも再稼働に進む可能性がある。

解説/「大丈夫…」楽観論が復活

 九州電力川内原発に原子力規制委員会が出した審査結果の案は、事実上の「合格証」となる。だが、規制委の田中俊一委員長が本紙読者の指摘で「安全基準」を「規制基準」と改めたように、規制委が判断したのは必要最低限の基準を満たしたことだけで、安全へのお墨付きではない。
 事故への備えは設備だけでなく、収束に当たる作業員を守ることも重要となる。規制委は問題視しなかったが、九電は当面、事故時の作業拠点として代替施設を使うことにしている。水道もなく、作業員の除染にも支障が出るだろう。
 火山の噴火についても、難しいとされている予知で対応できると楽観的に想定した。
 事故対策を重点的に進める原発三十キロ内では、住民の避難計画づくりは自治体任せ。机上の計画はできたものの、台風や地震などの自然災害と原発事故が同時発生した場合や、避難先の汚染への具体策はない。さらに、住民の被ばくを最小限にし、安全に避難できるかどうか、規制委は審査で確認していない。
 新たな規制は「原発では重大事故は起きない」という安全神話から決別し、重大事故を前提にしたはず。それなのに、今回の審査結果案を見る限り、いくつもの「大丈夫だろう」という楽観的な見方が前提になっている。この内容を手本とし、ほかの原発も審査が進んでいくと、安全神話の復活につながる恐れもある。(大野孝志)

(メモ)原発の新規制基準

 東京電力福島第一原発事故を教訓に、原子力規制委員会が策定し、昨年7月8日に施行された。地震・津波の想定を見直し、重要機器を守る防潮堤や、事故時の作業拠点の設置などを義務化した。重大事故が起きることを前提に、フィルター付き排気(ベント)設備も義務づけたが、川内原発など加圧水型は、福島第一などの沸騰水型に比べて格納容器の容量が大きく、基準の施行から設置まで5年の猶予期間がある。

関連記事