環境カウンセラー 講師に九電広報 「原発の必要性」研修計画

 環境問題への意識を高めてもらおうと、環境省が認定する「環境カウンセラー」に受講が義務付けられる研修で、九州地方環境事務所(熊本市)が、原発の必要性を説明する講習を計画していることが分かった。講師は川内(せんだい)原発(鹿児島県)の再稼働を目指す九州電力の広報担当で、違う立場の講師は招かれない。一方的とも取れるやり方に、現役カウンセラーから疑念の声が上がる。(荒井六貴、山川剛史)

 研修は、環境省の出先機関である地方環境事務所計八カ所で十一~十二月に開かれるが、十一月十七日開催の九州での内容は異質さが際だっている。
 九州地方環境事務所によると、午前中は、受講者全員が九州大教授による「放射能と放射線の基礎知識」と題する講演を聴く。午後は四分科会に分かれ、それぞれ講師を囲み議論する。
 参加申し込みのある四十人のうち、約三十人が出席する第一分科会のテーマは「原発の必要性」。九電の広報担当者が、原発は電力の安定供給や二酸化炭素削減に役立ち、環境問題の「回答」になると強調するという。残る三分科会のテーマは地球温暖化や生物多様性、大気汚染。グループ討論の中で、九電の言い分とは違う結論に流れる可能性もあるが、第一分科会を選んだ人は、原発関連の内容しか学ばないことになる。
 九州以外の環境事務所での研修内容は、バイオマス熱利用や環境教育など。福島会場は現地の最大の環境問題である放射能汚染がテーマで「完了が見えない現場」として除染問題を議論する。
 本紙の取材に、九州地方環境事務所の担当者は「誘導する意図はない。川内原発の再稼働にからめて時事的な問題を扱った。九電の話を聞いて『考え方は違う』という議論が起きるかもしれない」と話した。
 環境省環境教育推進室は「内容を承知していないので答えられない。今回の研修は『持続可能な開発』のための視点を入れてもらいたいという依頼はしたが、原発の必要性をテーマにするようには言っていない」とコメントした。
 一方、森林保全などの活動に取り組んできた環境カウンセラーの女性(67)は「とてつもない環境破壊をしたのは原発。世界が再生可能エネルギー導入に注力する中で、こんな講習をやっていては世界から冷笑される。真っ先に再生エネの買い取りを中断した九電を講師とする感覚も信じがたい」と怒った。

(メモ)環境カウンセラー

 学校や地域の環境学習で講師を務めたり、企業の環境保全活動のアドバイス役を担う。
 国家資格ではないが、環境分野での活動実績が4年以上ある人を対象に、環境省が論文と面接で審査し、合格すると登録される。昨年度の合格率は約35%。登録期間は3年で更新手続きが必要。最初の更新には、今回のような研修の受講を義務付けられる。生態系や公害、資源・エネルギーなど12分野で約3800人が登録されている。

本紙報道で、環境省は講師を交代、内容も変更

2014/11/12 (水) 東京新聞 朝刊 朝刊1面
環境カウンセラー研修テーマ 「再生エネ」に変更 環境省 「原発推進」批判受け 
 各地で環境活動の担い手を育成するため、環境省が認定する環境カウンセラーの研修で「原発の必要性」がテーマとされていた問題で、九州地方環境事務所(熊本市)は、テーマを「再生可能エネルギーの現状」に差し替えた。講師も九州電力の広報担当者から、熊本大教授に代えた。
 この問題は四日付の本紙報道で判明。研修は認定の更新をする際に必要で、四分科会のうち一つは川内(せんだい)原発(鹿児島県)の再稼働を目指す九電の広報担当者が登壇し、原発は電力の安定供給や二酸化炭素削減に役立つと強調する内容だった。
 七日の衆院環境委員会でも取り上げられ、河野正美議員(維新)は「九州から原発を再稼働するという官民挙げての強い意志と受け取る」などと指摘。望月義夫環境相は「誤解を受けないよう、真摯(しんし)に受け止め、テーマ内容などを変更させてもらう」と答弁していた。
 研修内容には何ら問題はないとしていた九州事務所の担当者は「大臣が答弁した通りなので、取材協力できない」。環境省環境教育推進室は「テーマや講師にバランスを欠いた部分があり、いろいろと考慮して、あらためてテーマを決めた」とコメントした。

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