福島第一の死亡事故 救出から診察まで25分かかっていた 医務室へ搬送現場任せ 命のサポート不備

 東京電力福島第一原発で先月二十八日、掘削作業をしていた下請け会社の安藤堅(かたし)さん(55)が土砂の下敷きになり死亡した事故の詳しい経過が判明した。安藤さんは十二分後に土中から救出され、助かる可能性はあった。だが、原発の常駐医が診察したのは救出から二十五分後など不可解な点も残る。特殊な現場だけに、改善すべき点がありそうだ。 (小倉貞俊、片山夏子)

「救出後10分程度なら助かる可能性ある」 なのに診察まで25分 

 事故の一報が現場から現地対策本部に入ったのは、発生から十一分後、救急救命の経験がある医師が二十四時間体制で常駐する医務室には十三分後だった。
 東電は速やかに医務室と本部に通報するよう、元請け会社を通じ、通報先の電話番号などを記した連絡体制表を配布している。
 だが、現場監督クラスの作業員は「通報先を知らない作業員が大勢いる。連絡が何段階も経由して遅れてしまうのが心配」と指摘。ほかの作業員も、連絡体制は必ずしも現場に徹底されていないと言う。
 安藤さんの救出は発生から十二分後と早かった。狭く動きにくい現場を考えれば、同僚が懸命に救出したことがうかがえる。
 「危険なのは確かだが、十分程度なら、医師が適切な措置をすれば助かる可能性はある」(日本救急蘇生普及協会長の野口宏愛知医科大名誉教授)
 だが、現場から二キロ近く離れた医務室に運ばれて診察を受けたのは救出から二十五分後。医師の指示で同僚が心臓マッサージをしたとはいえ、時間がかかっている。その理由については当事者間で話が大きく食い違い、はっきりしないが、別の作業員は「現場に担架があるわけでもなく、搬送に使える車が近くにないときもある」と話す。
 福島第一には救急車一台と搬送車三台があり、本部がこれらを活用してサポートしてもいいのに、医務室までの搬送は現場任せになっている。
 医務室には自動心臓マッサージ器などはあるが、できるのは初期救急まで。
 それ以上となると、設備のそろった病院への搬送が必要だが、福島第一周辺の病院は閉鎖中で、いわき市内の救急病院は医師不足が指摘される。
 東大医科学研究所の上(かみ)昌広特任教授は、ドクターヘリの活用が必要だとする。「ヘリなら、より高度な治療ができる福島市や仙台市の救急病院にもすぐ運べる」。現在、原発から北に約二キロの公園が着陸可能になったが、作業員からは原発内に発着場設置を求める声が上がっている。

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