被ばく増加→ベテラン減少→作業の長時間化→被ばく増加  福島第一原発で進む作業員 ”負の連鎖”

 東京電力福島第一原発事故から二年八カ月がたち、ベテランや技術者など作業員不足が深刻になっている。足りていると強調してきた東電も、最近では広瀬直己(なおみ)社長が「作業員の確保が困難になっている」と苦しい現状を認め、作業環境の改善や日当の一万円増額を発表した。現場では、ベテラン不在で作業時間が長引き、被ばく線量が増え、疲労が蓄積するなど悪循環に陥っている。(片山夏子)

現場知り抜くベテラン監督が現場に来られない

 「ここ、どうしたらいいですか」。若手の現場監督が携帯電話で話を始めると、「またか」と近くにいた男性作業員はため息をついた。
 原発事故から二年八カ月が経過。ベテランの監督は被ばく線量がいっぱいで現場に来られない。現場にまだ慣れていない若手監督は、福島第一内の線量の低い事務所にいるベテランに電話で指示を仰ぐ。
 十~十五分。作業員たちは作業を中断して現場で待機する。「図面で理解していても、現場で臨機応変に対応できない。その間も被ばくするし、作業も全然、進まない」。男性はぼやいた。
 男性は、海側敷地の汚染水対策を担当。足の下には、ケーブルや配管を収めるトレンチ(地下トンネル)が縦横に走り、たまった大量の高濃度汚染水で、放射線量が高い。たった一回の作業で、一般人の年間被ばく線量限度の一・五倍に達することもあった。
 男性は「来年まで仕事があると言われてきたのに、とてももたない」と嘆き、福島第一に来て一カ月もしないうちに、同僚らとともに現場を去った。
 問題は、現場を指揮する監督クラスだけではない。ベテランの作業員も減り、道具の名前や現場を知らない人が増えた。

作業時間増え、ますます増える被ばく

 このため作業が進まず長引き、被ばく線量が増える悪循環が起きている。「特に高線量の現場では、(ごく短期の雇用で)作業員が次々と入れ替わり、使い捨てになっている」(別の作業員)と訴える声もある。 「疲労が蓄積し、ミスにつながることも。そんな現場にますますベテランが来なくなっている」
 さらに、国が事故収束への関与を強めてきたことで、無理をしても工程通りに作業を進めようとする空気ができ、労働基準法すれすれの長時間労働(上限は一日十時間)も起きている。
 あるベテラン作業員は、普段は低線量の場所で作業をさせてもらっているが、場合によっては線量の高い現場に駆けつけることもあり、残りの線量はわずか。来年は福島第一で働けるかどうか分からない。
 「今まで何とか現場にとどまっていたベテランや技術者も、被ばく線量が限界に近づいている。事故から四、五年目の来春以降は、現場を知る人が一気にいなくなる」と懸念する。
 広瀬社長は先週、作業員確保のため、労働環境の改善策として、仕事に習熟した企業への継続的な作業発注や日当の増額などを発表した。
 しかし、別のベテラン作業員は「日当を含めどこまで実際に改善されるか。被ばく線量の問題に加えて、今の福島第一は待遇も悪く、雇用が安定しない。作業の核になるベテランだけではなく、作業員が全然集まらなくなっている」と話した。

(メモ)作業員の被ばく線量限度

 原発で働く作業員の被ばく線量限度は、通常作業時が「5年で100ミリシーベルトかつ年間50ミリシーベルト」と定められている。年間20ミリシーベルトを目安に管理する会社が多いが、福島第一原発事故後は被ばく線量が高かったため、本年度は、1、2年目の被ばく線量の超過分を考え、かなり低い数値に上限を設定し管理しているケースが多い。

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