福島第一また違法労働 10時間超に是正勧告 「トイレにも行けない」「奴隷扱い」

 東京電力福島第一原発で、作業員らに労働基準法で許される十時間を超える事故収束作業をさせたとして、安藤ハザマ(東京都港区)の下請け企業が、福島県の富岡労働基準監督署から同法違反で是正勧告を受けていたことがわかった。安藤ハザマも適正に管理するよう指導を受けた。福島第一では昨秋、東芝やその下請け計十八社が同様の違反で是正勧告を受けたばかり。東電が元請け各社に適切な労働管理をするよう要請した後も、十時間を超える作業がなされていた。

タンク増設、下請けにしわ寄せ

 福島第一では、汚染水問題に足を取られ、苦しい対応が続いている。日々、大量に発生する処理水のタンク増設に迫られており、今回の違法労働の引き金となったとみられる。
 今後も、タンク増設などの作業日程はますます過密になる。
 関係者の話を総合すると、少なくとも今年一~二月、溶接型タンクの増設作業で、作業員らに十時間超の違法労働をさせていたとされる。長いケースでは福島第一に十三時間半も滞在していた。休憩は、昼食時間の実質三十分ほどだけだったという。
 原発内の労働は被ばくを伴うため、一日の労働時間は労働基準法で、通常の八時間のほか二時間の残業の計十時間以内に制限されている。十時間には休憩時間は含まれないが、朝礼や打ち合わせ、待機時間など労働に必要な拘束時間は含まれる。
 作業員らによると、残業はタンクの納期が近づく月下旬に集中。「明日までに仕上げなくてはならない」「時間がない。(休み予定の日も)出てくれ」などと工程通りに仕上げるように言われた。中には、残業を減らすよう頼むと「要求に従わないならクビだ」と解雇された人もいるという。
 作業中に「トイレに行きたい」と言える雰囲気ではなく、現場で失禁してしまう人もいたという。ある作業員は、「休憩時間は昼に一時間あるが、休憩所までの移動や防護服の着替えを考えると、休みは実質三十分。残業を含めると作業は五、六時間休みなし。途中で疲れて休むと怒られた」と話した。十時間が近づくと線量計アラームが鳴るが、作業は続行したという。「人間扱いされていなかった。奴隷だと思った」
 安藤ハザマは「指導を厳粛に受け止め、このようなことがないよう再発防止策をしていきたい」とコメント。東電は「(元請けに)労務管理の徹底をお願いしているが、当社も元請けとともに労働者保護や就労環境の向上に引き続き努めたい」と話した。

マスク外せず、水飲めず 「残業減を頼んだら解雇」 

 昨秋に続き、東京電力福島第一原発でまた違法な十時間超えの過酷労働が発覚した。汚れた処理水をためるタンクが不足し、工程通りに完成させるよう、現場への締め付けが背景にあった。特に夏以降は大型の対策工事が数多く予定されており、現場からは過酷労働や事故を懸念する声が上がっている。 (片山夏子、<1>面参照)
 溶接型タンク増設を担当した作業員の一人は、雇用先の社長に「月締めで忙しいから出てこい。次の作業の日程が決まっている」と早出・残業をするように言われた。指示された作業量は、とても一日にこなせる量ではなかった。
 作業中はマスクをはずせないので、水も飲めない。別の作業員は、水分補給もままならない状況を、「夏なら脱水症状になる。疲れて集中力も続かない。残業を減らしてと頼んだら解雇された」と振り返った。
 当面の福島第一の作業予定をみると、建屋への地下水流入をストップさせるための凍土遮水壁建設や新型の除染装置の増設、水漏れの恐れがあるボルト締め型タンクの溶接型への置き換えなど、大型工事がびっしり詰まっている。これとは別に、建屋内の調査などの作業もある。
 タンク置き換えは、水抜きや解体、基礎工事、溶接などの工程が近隣のいくつもの区域で同時並行的に進められる。通常のタンク増設や外部の工場からの運び込みもある。作業の調整が重要だが、天候にも左右されるのに、日程的な余裕はあまりない。
 国や東電からは日程厳守のプレッシャーがかかる。四月の原子力規制委員会の会合で、経済産業省資源エネルギー庁の担当者は「本年度中に間違いなく(凍土遮水壁の)スイッチを入れ凍土の造成に入りたい。スケジュールに合うように今後も進めたい」と言った。「工程通り」という重圧が現場にのしかかる。
 現場では、ベテランの作業員や技術者不足が深刻化している。ベテランの一人は「一気にいろいろな作業をしようと人を詰め込んでいるが、作業間の場所や時間の調整がつかないままで作業が進んでいない。絶対無理な工程でも、国も東電もぎりぎりまで動かさない。現場の実情を考慮して進めなければ、人は離れるしトラブルや事故が起きる」と指摘した。
 福島第一では昨秋にも、東芝やその下請け企業が、労基署から是正勧告を受けている。これらの企業は、海側敷地の高濃度汚染水対策などで、作業時間が十時間になる前に、労働時間を記録する線量計を借り換えさせるなどして、実質十時間超えの違法労働をさせていた。東電は、東芝などへの是正勧告後、元請け各社に、作業が十時間を超えないように周知していた。

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