「仕事失うの怖い」 被ばく線量隠しの福島作業員が本紙に語る 雇用不安 「国は対策を」

 東京電力福島第一原発で下請け企業が作業員に線量計を鉛カバーで覆わせた不正が発覚したが、この件とは別に、半年にわたって線量計に鉛カバーを付けたり、現場に線量計を持ち込まなかったりして被ばく線量をごまかしていた男性作業員が本紙の取材に応じた。被ばく線量が限度を超えると仕事を失うかも-。そんな不安は、どの作業員も抱えている。(片山夏子)

年20ミリで働けなくなる

 昨年秋、福島第一で長く働く男性作業員は、所属する下請け企業が定めた年間被ばく線量限度の値に、自分の値がどんどん近づいていることに強い危機感を抱いた。
 「この調子で(被ばく線量が増えて)いくと仕事ができなくなると思った」
 原発作業員の被ばく限度は「五年間で一〇〇ミリシーベルト」。多くの下請け企業は年二〇ミリシーベルトを限度値の目安として管理していた。
 限度値に達すると、原発での仕事を続けることが難しくなる。年度が替わって新たに年二〇ミリシーベルトの枠をもらうまで、数カ月間は残り枠を大切に使わないと生活が危うくなる。
 そこで男性は、福島第一で配管を覆うために使う厚さ五ミリほどの鉛板を、カッターやハンマーで線量計がすっぽり入る箱形のカバーに成形。着替えの時、隠しておいたカバーの中に線量計を入れ、下着の胸ポケットへ。上から防護服を着ると分からなくなる。ただ、同じ現場で働く他の作業員と比べ、一日〇・〇一~〇・〇二ミリシーベルトの差しかなく、効果はほとんどなかった。「本当は完全に鉛で覆わないとダメ。でも、少しでも下げたかった」
 カバーのほか、数回は線量が低いロッカーや車の中に線量計を置きっぱなしにした。それでも昨年度末の今年三月、年間上限の二〇ミリシーベルトを超えた。
 男性はこの時、「あまり効果がなかったし、見つかれば仕事を失うことになる」とカバーをつけるのをやめた。ただ、昨年度に上限値を超えた分、本年度は与えられた線量の枠が減った。
 今後、廃炉に向けて被ばく線量が高い仕事が増えていく。「原発で長く働いてきた人ほど、仕事を失う不安は強い。国は火力発電所など他の仕事も確保して、福島第一で働く作業員が安心して事故収束作業を続けられるようにしてほしい」と男性は語った。

作業員が線量計を適切に着けているかチェックする係員(福島第一で、東電提供)

紛失・未装着計28件 昨年6月から

 東京電力は二十三日、福島第一原発事故で昨年六月以降、作業員が警報付き線量計を紛失したり、装着せずに作業していたケースが二十八件あったと発表した。東電によると、二十八件のうち紛失は二十件。脱衣時などに下着や防護服と一緒に誤って廃棄した例が多かった。こうした事例での被ばく線量は、最も高い人で〇・七二ミリシーベルトと推定されている。一方、未装着は八件で、大半は借り忘れが原因という。被ばく線量の推定値は最大で〇・七ミリシーベルトだった。
 松本純一原子力・立地本部長代理は「線量計がなくとも、被ばく線量は一緒に作業していた人の測定値から類推でき、問題ないと思っていた」と釈明。だが、事故発生当時、作業グループで一つの線量計しかないような事例があり、東電は国から改善を求められた経緯もある。
 また、被ばく線量を管理する現地の担当部署はその都度把握していたというが、線量計問題が表面化するまで、対策は取っていなかった。

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