核燃サイクルから「撤退」決断できない3つのワケ

 繰り返し核燃料を再利用できる-。こんなうたい文句で国が推し進めてきた核燃料サイクル事業だが、12兆円超もの巨費を投じながら、実現されたものはなきに等しい。原発を推進してきた人の中にも、事業の実現性に疑念を抱く人はいる。廃炉の可能性が浮上した高速増殖原型炉「もんじゅ」の問題は、事業からの撤退を決断する好機との指摘もある。(山川剛史、小倉貞俊)

責任問題が浮上してしまう、米国から得た権利もったいない、核のごみが返送かも…

 核燃サイクルを構成する施設のうち、完成したものといえば、実は原発くらいしかない。
 青森県六ケ所村に造られた使用済み核燃料再処理工場はトラブル続きで、完成時期は延び延びになってきた。混合酸化物(MOX)燃料工場も建設中。高速炉の輪も、もんじゅは一九九五年のナトリウム漏れ事故以降、ほとんど稼働していない。
 再利用の「輪」はブツブツに途切れ、現状では回らない。にもかかわらず、国は事業からの撤退を決断できずにいる。理由は主に三つある。
 一つ目は、既に投じられた資金があまりに巨額で撤退すれば責任問題が浮上するという思い。二つ目は、米国と長く交渉し、いちいち米国の許可がなくても核燃料からプルトニウムを抽出できる「包括的事前同意」する権利を一九八七年に認めさせた。これを捨てられるのかという思いだ。
 三つ目は、撤退すれば、事前の取り決めに基づき六ケ所村内に貯蔵されている核のごみを青森県外に運び出せ、と言われかねないとの懸念からだ。
 だが、今ある施設を維持するだけで年間千六百億円のお金が消える。経済的に成り立たないと困る電力会社は、必ずしも核燃サイクルに賛成ではない。
 「誰があんな高いMOX燃料を使いたいものか。使用済み核燃料の体積を減らす処理は必要だが、使用済みMOXはやっかいな存在だ。通常の核燃料より、冷めるまで時間がかかり、有害物質が大幅に増え、最終処分にも影響が出る」。東京電力原子力部門の元トップはこう語る。
 核燃サイクルを長年調べてきた原子力資料情報室の沢井正子氏は自らの調査経験と本紙の集計結果を重ねながら、「再処理工場をみても、トラブル続きのひどいありさまだ。コストはもっと膨れあがっていてもおかしくない」と指摘。
 その上で、「事業の全体像が分からないので費用の天井もなく、『足りなければ国民から取ればいい』という認識で続いてきた。だが、もんじゅの問題で注目が集まれば、国民の疑念も高まるのではないか」と話した。

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