狭く、地滑りリスクある半島で避難、支援はできるのか? 伊方3号機「適合」

 原子力規制委員会は20日、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)が原発の新規制基準を満たしているという審査書案を了承した。しかし、伊方原発は細長く険しい半島に立地し、事故収束に不可欠の物資・要員の輸送や、海路が頼りの住民の避難で課題がいくつも残る。原発事故は広く深刻な被害を及ぼすだけに、周辺の地方自治体からは再稼働への意見を反映させるよう求める声が高まっている。(荒井六貴、小倉貞俊)

国道には地滑りリスク、県道は断崖上の狭い道

 伊方原発は四国の北西から九州方面に延びる佐田岬半島(長さ約四十キロ、最大幅約六キロ)にあり、ミカン類の栽培に適した険しい山で囲まれる。
 原発は半島の根元近くにあり、事故収束要員や物資の輸送には、標高の高い半島中央部を走る国道と、瀬戸内海沿いの県道の二本を使うしかない。原発の西側には細い半島がさらに延び、伊方町民の半数に当たる約五千人が住む。重大事故が起きれば原発が半島をふさぎ、陸路で東側に逃げることは事実上、不可能。船や漁船で大分県に逃げることが想定されている。
 まず国道を車で走ると津波に襲われる心配はない半面、県が指定する地滑りの危険地帯が複数あった。国道から原発に行くには、標高差が約百八十メートルもある急な山道を下っていくしかない。災害時に使えるのかどうかは分からない。
 一方の県道は、垂直に近い崖と急カーブの連続で、対向車とのすれ違いが難しい地点も随所にあった。地滑りや土石流の危険地帯もある。拡幅工事が始まっているが、手付かずの場所が多かった。
 四国電も支援道路の問題は認識し、緊急時用のヘリポートのため敷地内の急傾斜地の造成工事を進めていた。来年三月までに整備するというが、悪天候になればヘリの運航は難しい。原発には専用港もあるが、船も天候に左右される。
 規制委は避難計画の実効性を審査しないが、原発西側の半島に暮らす住民の避難も天候に左右される。伊方町で旅館を経営する男性(69)は「事故時は漁船で逃げる話になっているけど、海が荒れたらアウト」と話した。町にも同様な意見が多く寄せられ、対応を検討中だが、答えは見つかっていない。

東から見た伊方原発。左端のドーム状の建屋が3号機
海沿いの県道はこんな様子(2015年)

周辺自治体からは「少なくとも30キロ圏の意見を聴いて」

 愛媛県内の原発三十キロ圏には、立地する伊方町のほか、六つの市町がある。
 「当市は十五キロ圏内にほぼ全域が収まる。(再稼働などの)節目には市の思いを尊重してもらう枠組みが必要だ」。伊方町の隣にある八幡浜市の大城一郎市長は常々こう主張してきた。伊予市は「少なくとも三十キロ圏には、意見を聴いてほしい」が公式見解となっている。
 宇和島市の石橋寛久、西予(せいよ)市の三好幹二の両市長は「脱原発をめざす首長会議」に名を連ね、意見を聴くよう求めている。大洲(おおず)市の清水裕市長も二十日、近隣市町の意見を踏まえるよう求めるコメントを出した。
 再稼働には、規制委の審査のほか、地元の同意が必要だが、昨年九月に規制委が新基準適合と判断した九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)のケースでは県がいちはやく地元の範囲を立地自治体の薩摩川内市と県のみに限定。異議のある周辺自治体の主張は封じ込められた。
 今のところ愛媛県は「伊方町の判断や県議会の議論を踏まえ、総合的に判断する」(中村時広知事)とあいまいな立場。鹿児島のように、県と立地する伊方町のみの意見で再稼働が進んでいく可能性もある。

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