伊方原発 新基準「適合」 「避難」「支援」置き去り 規制委3カ所目

 原子力規制委員会は二十日の定例会合で、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)が原発の新しい規制基準に適合しているとの審査書案を了承した。国民から意見募集した後、正式決定される。規制委が新基準を満たしたと判断した原発は、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)に次いで三カ所目となる。

フィルターなど未完成、避難計画の具体化もまだ

 規制委は新基準が施行された二〇一三年七月、四電からの申請を受けて審査を開始。地震や津波、竜巻などの自然災害への備えや、テロ対策、炉の圧力が高まった際に格納容器を守るためのフィルター付きベント(排気)設備、事故収束に向けた作業手順などの整備を求めた。
 審査では、敷地北側を走る「中央構造線断層帯」が引き起こす地震のリスクは四電の当初の想定より高いとの指摘が出され、四電は想定する地震の揺れ(基準地震動)を当初より一割超引き上げ六五〇ガルとした。これに伴い、想定津波の高さ(基準津波)も二倍の約八メートルに引き上げられ、事故時の対策拠点の耐震性が不足したため、新たに拠点を建設した。
 規制委は一連の対応をいずれも妥当と判断。審査書案は一カ月間の意見募集を経て、修正後に正式決定される。再稼働までには事故収束に向けた詳しい態勢や手順の審査、新たな対策が適切に施工されているか現場での検査のほか、地元自治体の同意が必要になる。
 一方、伊方原発は東西に細長く険しい佐田岬半島に立地しており、事故時の住民避難や収束要員の支援が適切にできるかどうか不明だ。また地震動の引き上げで必要となった配管の補強など千三百カ所の工事は秋までかかる見通しで、フィルター付きベント設備の設置完了は来年三月の予定。既存の制御室とは独立して原子炉の冷却などができる第二制御室はまだ検討中という。三十キロ圏内の自治体に義務付けられている避難計画も、受け入れ態勢などが具体化できていない。

解説/細長い半島 孤立の懸念 複合災害の対策も未定

 原発の新しい規制基準を満たすとの三件目の判断が二十日、原子力規制委員会で出された。四国電力伊方原発3号機(愛媛県)は今後、事故収束の具体的な手順の審査などを経て再稼働へ歩みを進めることになるが、規制委自体が認める通り、これで事故が起きないとの保証はない。
 瀬戸内海に面する伊方原発は、太平洋側に比べれば巨大津波に襲われる危険性は低く、敷地も標高一〇メートルの高さにあり、有利な条件がそろっているとされる。
 東京電力福島第一原発事故の反省を受け、非常用電源や冷却機能などが強化され、耐震設計の見直しで配管なども補強された。こうした対策により、規制委は仮に事故が起きても、ある程度のレベルで収まり、外部からの支援がなくても一週間は持ちこたえられると判断した。
 ただし、現地に足を運ぶと、険しい山と切り立った岩場が続く細長い半島のただ中にある制約はどうしようもないと実感する。原発に続く道は尾根筋の国道と海岸線に沿った細く曲がりくねった県道の二本しかない。いずれも地滑りで寸断される危険があり、国道から原発に行くには、高低差が約百八十メートルもある道を降りるしかない。
 原発の敷地も平地はほとんどなく、事故収束要員を地震や放射能から守る施設は狭く、福島第一のように大量の汚染水が発生した場合、タンクの設置場所は見当たらない。
 半島西側に暮らす約五千人の住民たちの避難ルートは海路か空路しかなく、悪天候と原発事故の複合災害となった場合の解決策もまだない。(山川剛史)

(メモ 原子力規制委員会の審査

 規制委は現在、新しい規制基準に基づく審査を全国15原発計24基で実施している。昨年9月に九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)が、今年2月には関西電力高浜原発3、4号機(福井県)が新基準に適合したと判断した。川内原発は、地元自治体が同意を表明しており、現場検査などが終われば、今夏にも再稼働する可能性がある。一方、高浜原発は福井地裁が4月、再稼働差し止めの仮処分を決定し、関電側の異議が認められない限り再稼働はできない。

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