伊方3号機 規制委が「適合」決定 意見公募の「懸念」軽視

 原子力規制委員会は十五日の定例会合で、四国電力伊方(いかた)原発3号機(愛媛県)が、新しい規制基準を満たしているとする審査書を正式決定した。九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)と関西電力高浜原発(福井県)に続いて三件目の「適合」判断。パブリックコメント(意見公募)には、懸念を中心に三千四百六十四件の意見が寄せられたが、規制委は真正面から向き合おうとしないまま、再稼働への重要な関門を通過させた。(小倉貞俊)

ベントフィルターなど重要対策 再稼働時は未完成

 規制委自身が基準に盛り込んだのに、再稼働の時点では未完成でよいとしている設備に、フィルター付きベント(排気)設備がある。
 「設置を猶予すべきでない」と寄せられた意見に、規制委は「必要な機能を満たした上で信頼性をさらに向上させるための対策」と回答した。安全追求には終わりはないと強調しておきながら、設置に時間がかかるものは後回しでよしとの考えを変えなかった。
 「四電の想定通りに事故収束作業が進まなかったらどうするか」との懸念も寄せられたが、規制委は今後の保安規定の審査で確認すると明確に答えなかった。
 どの原発でも、住民の避難計画の実効性は問題視される。特に伊方原発の場合は、海路での避難の現実性に疑問がある。
 規制委による計画の審査を求める意見もあったが、規制委は「(内閣府が)法律に基づき対応を講じる」とし、担当外との立場を崩さなかった。
 福島の原発事故では、賠償金が兆円単位。そんな危険性を秘めた原発を動かそうとする事業者には、相応の資金力が求められる。
 四電の資金力はチェックしたのかとの疑問が寄せられたが、規制委は新基準に対応する費用をまかなう資金力を審査したと回答した。被害に比べわずかな額の保険金制度や、福島への対応で手いっぱいの賠償制度の問題点には触れなかった。
 意見公募自体が形骸化しているとの指摘もあったが、この日の記者会見で田中俊一委員長は「法的な義務ではなく、自主的取り組みとしてやっている」と述べ、今後も続けるかどうかは分からないとの認識を示した。

解説 福島の教訓どこへ

 四年四カ月前、東京電力福島第一原発は、巨大地震と津波により、ほとんどなすすべなく重大事故に陥った。道路は壊れ、住民は大渋滞の中をさまよい、十一万人が今も避難を強いられている。四国電力伊方原発3号機は新規制基準に適合していると判断されたが、福島の教訓を十分踏まえたのか、疑問が残る。
 伊方原発は、将来起きる可能性の高い南海トラフ巨大地震の震源域の中にあり、四電は設計の基となる地震の大きさを引き上げ、施設の補強を進めている。この対応により、原子力規制委員会は新基準を満たすと判断した。
 だが、新基準を満たしているからといっても、必要最低限の要求を満たしたにすぎない。規制委が認める通り、事故が起きないわけではない。
 国際基準では、重大事故の拡大を防ぐ対策も突破され、避難させるしか周辺住民を守る手段がない事態まで想定した備えが求められている。
 伊方原発は、切り立った崖が続く半島の付け根に立地しており、事故が起きれば、住民の避難や応援要員が集まるルートは非常に限られている。半島の西側に住む約五千人は、海路か空路で避難するしかない。福島事故のように天災との複合災害となった場合、避難も支援も困難となる。
 規制委は、住民避難の指針を決め、原発の周辺自治体に避難計画の策定を義務付けておきながら、避難計画の実効性はどの機関も検証しない。この状況は、既に適合判断が出された他の原発の審査でも同じだった。住民の安全は置き去りにされたまま、三たび再稼働への道筋が付けられようとしている。(大野孝志)

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