時間のかかるフィルターや免震施設は後回しでOK 政府が大飯の早期再稼働で暫定基準

 政府は四日、関西電力大飯(おおい)原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働問題で、格納容器の圧力を下げるベント(排気)時に放射性物質を取り除くフィルターの設置など時間がかかる対策は、再稼働の是非を判断する暫定基準に含めない方針を固めた。非常用電源車の配備や建屋内の浸水対策などが進んでいることを強調し、フィルターなどは中期的に取り組むことを説明することで、早期の再稼働を狙う。

事故対応拠点など「3、4年かかる」 だから再稼働後の完成でよし??

 暫定基準は、大飯原発がある福井県やおおい町が要望しており、野田佳彦首相が三日の関係三閣僚との会合で策定を指示。藤村修官房長官は四日の記者会見で、基準の策定について「一日二日、相当鉢巻きを巻いてやる」と話し、経済産業省原子力安全・保安院が検討を進めている。
 保安院は、東京電力福島第一原発事故を踏まえ、全電源喪失や冷却設備の機能喪失にならないよう三十項目からなる報告書をまとめている。基準はこれがベースになる。
 再稼働の条件となる安全評価(ストレステスト)の一次評価が進む大飯原発や四国電力伊方3号機は比較的新しい上に、福島第一原発に比べると格納容器が大きく、圧力が高まりにくいため安全性は高いとされる。非常用電源車の配備や、炉心への代替注水機能の確保などの対策も既に終わっている。ただ、ベントフィルターの設置や緊急時に大量の作業員が寝泊まりできる免震施設の建設など時間がかかる対策も残っている。これらをすべて満たすには「少なくとも三、四年はかかる」(保安院幹部)という。
 フィルター設置なども暫定基準に含めてしまうと、再稼働の時期が大幅に遅れることになる。このため、政府は三十項目のうち多くの安全対策が進んでいることを確認し、残る対策も計画が進んでいることをアピールしていく考え。
 ただ、原子力安全委員会が「一次評価だけでは不十分」と疑問を投げかけ、免震施設の重要性を強く訴えている。こうした中、骨抜きとも受け取れる基準で政府が再稼働を認めようとすれば、地元を含め広く反発が出る可能性もある。

周辺住民や作業員たちは守られるのか

 原発の再稼働を認めるかどうか首相らが判断するための暫定基準で、政府が時間のかかる対策は棚上げする方向を固めた。ただ、これで稼働させた場合、事故収束にあたる作業員を被ばくから守る施設は不十分で、ベント(排気)を迫られても放射能汚染を最低限にとどめるフィルターが整備されないままの運転となる。(鷲野史彦、福田真悟)
 安全評価(ストレステスト)の一次評価で先行するのが関西電力大飯原発(福井県)と四国電力伊方原発(愛媛県)だ。
 大飯原発の場合、前線基地として使え、放射性物質対策も施してあるのは、事務棟地下の対策室だけ。免震機能はなく、広さは二百八十平方メートルで、四十三人が過ごすことしか想定していない。
 東京電力福島第一原発事故では、もっと多くの人が免震施設で寝泊まりしたが、関電担当者は「作業員が寝泊まりする場所はない」と話した。四年後までに免震施設を建設する計画だが、それまでに事故が起きれば、作業員の被ばくが防げるか不安が残る。
 伊方原発も昨年十二月に新しい免震棟が稼働したが、放射性物質対策を施した対策室は二十人程度が活動する想定。四国電の担当者は「作業員がどう活動するか明確に決まっていない」と明かす。
 福島の事故では、炉心の過熱で格納容器の圧力が設計値の二倍まで上昇。容器の大破を防ぐため、内部の蒸気を抜いて圧力を下げるベントを迫られた。
 大飯、伊方の両原発は、福島第一とは構造が全く異なり、格納容器の容量が福島の五倍ほどある。圧力は高まりにくいとされるが、近隣住民に安心感を与える目的で、関電、四国電ともベントフィルターの設置を検討している。設置されれば、万が一ベントをしても放射性物質の放出量は千分の一程度に抑えられる。
 ただし一基当たり二十億~四十億円、工期は一年程度かかるとされ、いつ設置できるかはっきりしない。
 原発の膨大な熱は、海水ポンプで海水を建屋内に送り、熱くなった水を海に戻すことで逃がす。ところが、福島事故ではポンプが津波で水没し、機能しなかった。
 この反省を受け、大飯と伊方では、既存のポンプが使えなくなっても、代わりとなる移動可能な非常用海水ポンプを配備した。
 だが、海水ポンプそのものを守る対策はこれからだ。関電は既存の防潮堤を三メートルかさ上げして八メートルにし、海水ポンプを守る六メートルの防潮堤を建設するが完成は二年後。四国電も防潮堤を造るが、完成は二~三年後だ。

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