また鋼材落下 3人重軽傷 福島第一 タンク増設エリア

 東京電力福島第一原発で七日、汚染された冷却水を処理した水をためるタンクの増設作業中に、三百九十キロの鋼材が落下し、三人の男性作業員が重軽傷を負った。一人は脊髄を損傷しており、意識は取り戻したものの予断を許さない状況。他の二人は一人が両足首を骨折、もう一人は両足に打撲傷を負った。福島県警双葉署で原因を調べている。

2カ月前にもパイプの落下事故

 同じタンク増設区域では、九月二十日にも作業中に鉄パイプが落下して、作業員がけがを負った。
 双葉署や東電によると、けがをした三人は東電子会社の東京パワーテクノロジー(東京都江東区)の下請け会社の作業員で、四十代と五十代。いずれも福島県いわき市在住。
 東電などによると、事故が起きたのは「J2」と呼ばれる区画。七日午前十一時二十三分ごろ、IHIプラント建設(同)の作業員らが、溶接型タンク(約二千四百トン)の上部で、はしごを掛ける鋼材の設置位置を調整していたところ、約二十五メートルの半円状の鋼材が十三メートルの高さから落下。鋼材は地面に当たった後、隣接するタンクで水漏れ防止用の堰(せき)を造る作業をしていた三人に当たった。
 所内医務室の医師や救急士ら三人が現場に急行。意識不明だった一人はドクターヘリで福島県立医科大、骨折するなどの二人は県の消防防災ヘリでいわき市立総合磐城共立病院に運ばれた。

安全二の次 工程厳守のプレッシャー 事故頻発

 東京電力福島第一原発で9月と11月、増設中のタンク上部から鋼材などが落下し、作業員が重軽傷を負う事故が相次いだ。福島第一では、作業員の事故・トラブルが大小を問わず増え続けている。浮かび上がるのは、とにかく工程表の通り作業を進めるよう国や東電から厳しく迫られ、しわ寄せを受ける現場の実態だ。(片山夏子、小倉貞俊)

狭いエリアで同時進行の作業

 二件の事故の状況を図にまとめた。共通するのは、早急に完成させることが求められている溶接型タンクで起きた▽高さ十メートル以上もあるタンクの上部からの落下物が原因▽負傷した作業員は、上部で作業が続く現場近くで、別の作業をしていた-ことなどだ。
 九月の事故では一人が背中を骨折、十一月は三人が脊髄損傷などの重軽傷を負った。鋼材の重量や落下した高さからすると、死亡事故となっていてもおかしくなかった。
 建設現場の常識では、危険回避のため、高い場所で作業しているときは、その下で別の作業はしない。十一月の事故は、作業員が別々のタンクにいて十メートルほど離れていたとして、東電は「上と下の作業ではなかった」というが、落下した鋼材は長さが二十五メートルもあった。地面で跳ねて隣接するタンクの周りにいた作業員に当たった。
 東電は「どの程度の距離を離して作業するかを検討していく」と釈明するが、改善される保証はない。
 タンク増設現場を上空から見ると、地盤改良、基礎コンクリート板の設置、タンクの組み立て・溶接…。多くの作業が狭い用地内で並行して進められ、いくつものグループが同時に作業している。よほど慎重に現場を管理しないと、同様の事故は再発しかねない。
 ある現場作業員は「事故やけがが頻発するのは、作業員数が増えたこともあるし、工程を守れとのプレッシャーもある」と話す。
 工程に余裕があれば日時をずらして作業するが、急ぐため近接する場所での作業もする。福島第一では「作業前準備や作業環境をきちんと整える余裕がない。すぐ近くでの作業もいっぱいある」という。
 別の作業員も工程に間に合わせるため、朝から夜まで連続作業になるようシフトが組まれているという。作業員の数は限られ、どうしても長時間勤務になる。
 初めての作業も多く、いざやってみると、工法を変えないといけなかったり、時間が予定の何倍もかかったりする。「工程を作り直さないといけないのに変わらない。トラブルがあれば残業になる」
 現場に東電幹部から「これ以上、一日も遅れることは許されない。ただし事故は起こすな」と圧力がかかることもあったという。
 東電が大きな事故以外は発表しないことから、作業員の協力を得て、ここ半年ほどの事故やけがの事例を集めた。一部なのに相当な数に上った=表。手を滑らせてパイプが落下、コンクリートの打設現場で金物に肘を引っかけ数針縫うけが…。
 「現場は急がされ、心理的にも事故が起きやすくなっている」。ベテラン作業員は現状を嘆く。

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