「国の圧力…急げ急げ」 違法ぎりぎり過酷労働 福島第一作業員 線量計交換 10時間超えも

 国から一刻も早い汚染水問題の解決が要求される中、東京電力福島第一原発の作業員らは、労働基準法ぎりぎりの過酷な長時間労働を強いられている。作業員らの証言では、法定の十時間近くになると、身に着けている線量計のアラームが鳴るため、途中で線量計を取り換え、違法な残業をしている事例もある。

原発で許される残業は2時間まで

 原発は放射能と隣り合わせのため、労働基準法は、通常の八時間のほかは二時間の残業しか認めていない。このため、線量計は九時間半で鳴るように設定されている。
 福島第一の現場は、安倍晋三首相が国際社会に対し「汚染水の影響は完全にブロックされている」と明言し、プレッシャーが高まっている。
 「国が、重要な設備だから早くしてくれと言っている」「一日も早くやってくれ」「今日明日で何とかしなくてはならない」
 大手プラントメーカーの傘下で働く複数の作業員によると、作業はせかされる上、一日の作業は八時間以上に及ぶことも多い。原発を出る前に、一斉に線量計のアラームが鳴ったこともある。現場責任者からは、十時間が近づいた場合、いったん線量計を管理施設に返して福島第一を退出し、新しい線量計を借り直して現場に戻るようたびたび言われた。
 海側敷地のトレンチ(ケーブルなどを収める地下トンネル)での作業にかかわった男性によると、すでに八時間半ほど敷地にいた作業班が、現場で「残業できるやつはいるか」と聞かれ、うち半分が線量計を取り換えて戻った。作業員は「長い休憩を取っているわけでもなく、実労働で十時間は確実に超えている」と訴えた。
 東電は「労務管理は元請け会社にしてもらっている」とコメント。大手プラントメーカーは「当社社員に十時間超の労働はさせておらず、下請けについては、各社で労務管理している」。一次下請け会社の担当者は「線量計を借り換えさせたこともないし、(違法なことは)させていない」と話した。

「このままでは大きな事故に」 現場は悲鳴

 福島第一原発で長時間の作業をする作業員たちは「長時間労働で疲労はピークに達している」と、作業ミスや事故につながることを恐れている。
 いま福島第一では、地上タンクに大量に貯蔵される高濃度の放射性ストロンチウムなどを含む処理水を浄化するため、新たな装置の本格運転に向けた準備が進む。海側敷地の地下を複雑に通るトレンチから高濃度汚染水を抜き取る準備も急ピッチで進められている。
 「線量計は何度でも取り換えられる。(アラームが鳴る前に原発から)いったん出て入ってこい」。現場責任者から、線量計の借り換えを指示された作業員はがくぜんとした。現場は、トレンチにたまる高濃度汚染水の影響で放射線量が高い。そんな場所で長時間働けば、被ばく線量も高い。事故現場である以上、休憩時間も被ばくは続く。仲間の作業員は「これでは十日余りで働けなくなる」と悲鳴を上げる。
 十時間を超えるような労働実態があるのに、これまで表ざたになっていない。ベテラン作業員は「十時間を超えていても、会社の人が『休憩時間を長く取っているから十時間を超えていない』と報告するのを以前、見たことがある」と明かした。
 福島第一ではこの二週間、単純ミスによるトラブルが五件も相次いでいる。国や東電からの急げ急げの過大な圧力で、判断力や注意力が鈍っていると指摘されている。
 ベテラン作業員は「休みなく残業が多い中で、みんな疲れきっている。仲間をかばうわけではないが、福島第一で作業ミスが多いのも仕方ないと思う部分がある。このまま無理な工程に合わせて現場を急がせていたら、いつか大きな事故になる」と話した。(片山夏子)

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