「原発 即ゼロ」 福島 怒りの聴取会 「収束」「再稼働」 政府不信一色 

 東京電力福島第一原発事故で計り知れない打撃を受けた福島県で一日、将来の原発比率をどうするか、県民の意見を政府が聴く会が開かれた。将来0%どころか「すべての原発の即廃炉」を求める声が相次いだ。政府は事故収束宣言や原発再稼働など県民の心を逆なでしてきたため、政府への不信感や怒りの声に染まった。

発言者の意見に賛同し拍手する参加者=1日午後、福島市で

「あれだけの事故があったのに、もう再稼働」

 これまでの会は、二〇三〇年の原発比率を0%、15%、20~25%とする三つの選択肢から選び、それぞれに意見を述べる形式だったが、福島ではとても受け入れられないことから、政府は発言希望を募るだけにした。インターネットで発言希望を出した九十五人の中から無作為抽出された三十人全員が一人五分で意見を表明した。
 聴取会は四時間に及び、原発比率の議論より、政府の姿勢を疑問視する声が目立った。特に、昨年末の「事故収束」宣言や、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働、さらには原子力規制委員会の人事といった一連の政府の対応がやり玉に挙がった。
 福島県の各地では、数多くの人が避難生活を余儀なくされ、放射能の影響も広く残っている。そんな中で政府が「サイト(原発)内に限っては」と前置きをしようと、収束宣言は切り捨てと映ったようだ。「政府ではだれも事故の責任を取っていない」「何の根拠があって収束宣言したのか」など次から次へと批判の声が出た。
 再稼働問題はほぼ全員が問題視した。「あれだけの事故があったのに、もう再稼働させてしまった。失礼だ」「山も森も放射性物質。そんな中で再稼働に踏み切った政府に憤りを感じる」などの意見が出た。
 規制委人事でも「また原子力ムラで固めるつもりなのか」と疑問が出されると、会場から「ふざけるな」の声が一斉に上がった。
 こうした聴取会が単なるガス抜き、アリバイづくりではないかと、根深い不信感を口にする人も多かった。
 全国各地に大量に残る使用済み核燃料の処分や放射性廃棄物の処理方法が決まっていない問題を指摘する意見も目立った。

聴取会の後、参加者に呼び止められる細野原発相=1日午後、福島市で

福島の叫びを聞け シナリオ討論自体、矛盾 アリバイづくりか

 ある人は拳を振り上げ、ある人は涙に声をつまらせて脱原発を訴えた。福島第一原発事故の被災地、福島市で一日に開かれた意見聴取会では、福島の人たちの怒り、嘆きが渦巻いた。
 「福島県民は国民ではないのですか」。福島市の女性はこう発言し、政府が事故原因不明なまま福島第一原発事故の収束を宣言した上に、「国民の生活を守るため」と大飯原発を再稼働させたことを憤った。女性は続けた。「私たちは何度も何度も国に捨てられている」
 富岡町から福島市に避難している男性は、野田佳彦首相の煮え切らない姿勢に腹を立てていた。毎週金曜に官邸周辺で行われる脱原発デモにも反応薄く、脱原発という決断に踏みきろうとしない。実直そうな感じが売り物だった首相に、男性は呼びかけた。
 「総理、ドジョウに戻ってください。泥をかぶってすべての原発を廃炉にしてください」
 閉会直後、抽選で外れて発言できなかった女性が、細野豪志原発事故担当相に詰め寄った。「福島の苦しみ、悲しみを思ったら(原発の)再稼働なんてあり得ないでしょう。どうしてそんな簡単なことが分からないの!」
 その勢いに、普段は弁が立つ細野氏も、ただ黙って聴くだけだった。
 国民の声を聴くと言いながら、それと反するようにさまざまな制約の中で進む原発比率の「国民的議論」。意見聴取会は四日の高松、福岡を残すだけとなった。(小野沢健太)

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