AtoZ「今夏の電力需給」

 東日本大震災から5回目の夏を迎える。電力の3割近くを依存してきた原発が止まったが、家庭や企業が節電に協力して乗り切ってきた。今後も代替エネルギーの確保や節電の努力は必要だが、電力各社で電気を融通するなどの取り組みも強化され、この夏も電力不足は回避できる見通しだ。(原発取材班・岸本拓也)

?供給は 原発なしでも余力

 電力は需要が供給を上回っても、逆にだぶつきすぎても、周波数が乱れ大停電につながる可能性がある。気温や湿度といった電力需要につながる要因を的確に予想し、ほどよい余力を確保しながら電気を送るのが電力会社の腕の見せどころとなる。
 東京電力福島第一原発事故で、原発の持つ大きな危険性が強く認識され、緊急対策のため原発が次々に止まった。供給力の余裕はなくなったものの、電力各社は古い火力発電所も動員して供給力を増強し、家庭や企業も節電を進めた。
 また、全国の送電網を活用し、余裕のある電力会社が足りない会社に電気を融通して乗り切ってきた。
 震災後初めて原発が一基も稼働しなかった昨夏でさえ、供給力の95%以上の電気を消費する「厳しい」を記録したのは、中部電力と関西電力の二社で各一日だけだった。
 政府は今夏の需給見通しを発表したが、原発が稼働していなくても、全国で余力を確保できそうだという。原発依存度の高い関西電力と九州電力は単独では不安があるものの、比較的余裕のある中国電力や四国電力などから電力を融通してもらうことで乗り切れそうだ。
 電力各社の融通をめぐっては今年四月、全国の需給状況を日々監視する「電力広域的運営推進機関」(東京)が発足。厳しい地域があれば、余力のある地域に融通を指示し電力不足を回避する体制も整いつつある。
 日本の電力は、五〇ヘルツと六〇ヘルツの二つの周波数が使われている。周波数の異なる地域間で電力融通をするには、周波数を変換して送る必要がある。これが一つのネックとされてきた。
 現在の変換能力は百二十万キロワットだが、五年後には二百十万キロワットに増強。さらに将来的には三百万キロワットに増やす計画が進められている。計画が完了すれば、全国規模で電力を支え合う仕組みはさらに強くなる。

?需要は 節電、値上げで減少

 高度成長期からずっと右肩上がりで増え続けてきた日本の電力需要は、東日本大震災を機に減少に転じている。
 二〇〇八年のリーマン・ショックによる世界的な景気低迷で国内の電力需要も大きく落ち込み、大震災でさらに落ち込んだようにも見える。
 ただ、ここ一、二年、国内の景気は大企業を中心に回復基調にあり、本来なら電力需要もつられて増えるはずだが、原発のない沖縄電力を除く大手電力九社の販売電力量を見ると、四年連続で減少している。
 福島の原発事故で国民の間に節電意識が定着したこともあるが、企業が既存の大手電力会社から離れつつあることも大きく影響している。大手電力が企業向け電気料金を値上げしたため、多くの企業が新規に参入した新電力に契約を切り替えたり、自家発電の導入を進めたりしたためだ。
 企業と同様、消費者にとっても気になるのは、電気料金が今後どうなっていくかだ。
 震災後、大手電力九社のうち北陸電力と中国電力を除く七社が電気料金を値上げした。
 本体の料金とは別に、発電の主力・液化天然ガス(LNG)の価格変動分や、太陽光など再生可能エネルギー導入を促進するための費用を消費者は追加負担している。値上げ分と負担分を合わせると、家庭向け料金は震災前に比べ、平均で二割ほどアップしている。
 ただ、LNGは震災直後のように、輸出国に従来の倍近い価格で買わされるような状況はなくなってきた。昨今の円安で、輸入価格が下がりにくい状況はあるものの、LNGの国際的な取引価格は原油の急落や、米国を中心にした新たな天然ガスのシェールガスの生産拡大により下落傾向にある。また、再生エネの促進費用も普及に伴い設備費が下がり買い取り単価が下がるなど、当面、電気料金の急激な値上がりは避けられそうだ。

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