AtoZ「急成長する太陽光発電」

 不安定、コスト高などと批判されてきた太陽光発電だが、今夏、急速に成長し、電力需要のピーク時に大きく貢献した。再稼働中の九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)クラスだと12基分の電力を生み出していた。今後はどうなるのか。再生可能エネルギー大国のドイツの実情とあわせて考えた。(原発取材班・山川剛史)

今夏は? 需要ピーク時、戦力に

 今年七、八月、電力各社は需要ピーク時の電力をどう確保していたのか。原発のない沖縄電力を除く九社に取材したところ、太陽光発電の成長が目立った。
 地域によってピークを迎えた日や時間帯は若干異なるが、九社が需要を見越して準備した電力は計一億七千二百万キロワット。首位は火力発電で一億三千万キロワット(75・4%)と圧倒的に多かった。二位は、上流側の池にくみ上げておいた水を、需要に合わせて下の池に放出し発電する揚水発電で千九百万キロワット(10・9%)。三位は水力発電の千二百万キロワット(7・0%)だった。二年前まで1%に満たなかった太陽光発電は千百万キロワット(6・5%)にまで伸びた。関西、四国、九州ではピークが午後四時と太陽光発電には不利な条件だったが、ピークが日中ならもっと発電量は多く、水力を抜いて三位だった可能性もある。
 一日を通した発電割合の推移は公表されていないが、東京電力は五年前と今夏を比較した資料を作成していた。それを見ると、太陽光発電が需要の高まりに追従するような形で発電し、その分、コストが高い石油火力はあまり発電しなくて済んでいる状況が読み取れた。また揚水発電も、太陽光発電が活躍している時間帯はフルに動かさず、太陽が傾き始めた夕方、温存しておいた力を使う手法にシフトしている。
 夏には重要な役割を果たすことが明確になった太陽光発電だが、冬はどうなのか。経済産業省の電力需給検証小委員会がまとめた昨年冬の実績データでは、厳しい現実も見てとれる。
 九社のうち中部電力管内を除く八社では、冬のピークは夜間だった。当然、夜間に太陽光発電の出番はない。中部もピークが夜間だったら、資料には太陽光発電はゼロと記されるところだった。
 昨年冬の需要ピークは、低気圧の通過で全国的に大荒れとなった十二月十七日に迎えた地域が多かった。北海道や東北、九州では風が強かったせいか、再生エネのもう一つの柱である風力発電が二十万~三十万キロワットを発電。それなりに貢献したものの、需要全体から見れば非常に小さな数字だ。
 仮に冬のピークが日中だったとしても、太陽光発電は春や夏ほど発電しない。冬の日差しは弱く日照時間も短い。記者の自宅に設置した太陽光発電のデータを見ても、最も発電量が多い四、五月に比べ、十一、十二月は半分にも満たない年がほとんどだった。

将来の電源は? ドイツ参考に安定化を

 では、太陽光や風力、バイオマスなど再生エネ導入で先行するドイツはどうだろうか。
 よくドイツの電気料金の高さが問題にされる。確かに日本よりかなり高い。ただ、日本の消費税に当たる付加価値税は19%と高く、電力税などもかかる。再生エネの導入量が多い分、再生エネ買い取りの賦課金もかなり高い。こうした電気本体以外の部分が52%を占めている。
 ただ、為替レートで料金の見え方は大きく異なる。現在は一ユーロ百三十六円前後だが、二〇一二年は百円前後。百円だと日独の料金はほぼ同等で、日本では税金も再生エネ賦課金も少ないのに割高との見方もできる。
 脱原発と再生エネへの転換を約束したドイツの昨年の発電実績では、再生エネが25・8%を占める。今年上半期は再生エネ比率が30%を突破したという。風力発電が全体の8・6%、バイオマスが同7・0%、太陽光が同5・8%となっている。
 公表データを見ると、再生エネの発電量、発電割合は季節や天候で大きく変動することが分かる。再生エネが全体の六割を超える日があったかと思えば、太陽も風もほとんど期待できず、バイオマスや河川の水力発電を除けば、ほとんど再生エネが寄与しない日もあった。
 長いドイツ駐在経験があり、ドイツ事情をインターネットで発信している「ドレスデン情報ファイル」編集長の伊崎捷治さんは「現在の大きな課題は、再生エネの発電量が少ない時のバックアップとして、既存の発電所をどこまでどう維持するかだ」と指摘する。
 七年後には、発電量の16%を占める原発が稼働を停止し、再生エネがさらに増えるため、バックアップ体制を整えることが急務。各地に小規模な発電所を増やしたり、再生エネの買い取り単価を下げ、できるだけ自家消費を促したりし、既存の発電所への依存度を減らそうとしている。風力発電と揚水発電を組み合わせ、風力による電力が余った時間帯に揚水発電所のポンプを動かし、上の池に発電用の水という形でエネルギーをためる試みも進められている。
 日本の再生エネ比率はまだドイツより大幅に低いが、比率が高まるにつれ新たな課題が浮上してくるのは必至。エネルギー政策に詳しい都留文科大学の高橋洋教授は「豊富な森林資源を活用したバイオマスや風力、地熱などが増え、バランスがとれてくれば解決できる」と話す。電力ネットワークの広域的な運用や揚水発電の活用で、再生エネが増えても電力の安定化は実現できると指摘している。

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