福島沖試験操業再開 現状は? 安全な魚種 特定できず ストロンチウム調査必要

 福島沖で25日、相馬双葉漁業協同組合が試験操業を再開した。東京電力福島第一原発からの汚染水漏れが続く中の再開。海やそこに生息する魚介類への影響はブロックされているのだろうか。これまでの調査データなどから現状を探った。(山川剛史、清水祐樹、志村彰太)

事故前の水準に戻りつつある海水 ただし底には蓄積

 「海水は、原発事故前の状態にほぼ戻りつつある」。長年、原発沖合の海水を調べてきた公益財団法人海洋生物環境研究所(海生研、東京都)の担当者は断言する。
 広大な海。放射性物質を拡散させる力は大きく、確かに海水に汚染といえるほどのデータは見あたらない。
 ただし、海底には放射性物質がたまる。原子力規制委員会や環境省が、船で海底土を採取して放射性セシウムを調べたデータでは、福島第一の北側は高くないが、東側と南側の沿岸では、かなり高い濃度が分布する。海生研によると、最近では濃度分布は変わらなくなってきたという。
 福島の海は、沖は北向きの流れだが、沿岸は南向き。潮流の影響で、こうした濃度分布になったとの見方もできるが、ずっと北の仙台沖にも濃度の高い地点があり、よく分かっていないという。
 今回の試験操業では高い濃度付近の操業は見送った。

イカ、タコ、コウナゴは大丈夫 メバルなどは要注意

 これまで三万七千匹超の魚などが検査された。水産庁のまとめでは、食品の基準値(一キログラム当たり一〇〇ベクレル)を超えるケースは時が進むにつれ急減し、最近では福島沖で3%弱、それ以外では0・4%にまで下がった。
 放射性物質がたまりにくいタコやイカ、短期しか生きないコウナゴなどでは基準超えの事例はなくなった。小魚を捕食するスズキ、海底に生息するカレイ類、岩礁帯のメバルなどは時折、基準を超えている。
 難しいのは、海底土の濃度分布が、魚介類の汚染と一致するわけでもない点。同じ魚種でも成長段階により汚染度が違い、カレイの仲間の中には濃度が非常に低い種類もいる。どの魚種は大丈夫か特定するにはまだ調査が必要のようだ。
 現在の調査で欠けているのは、放射性ストロンチウムの影響だ。福島第一のタンク群には、高濃度のストロンチウムを含む水が三十万トン超もあり、原発専用港のストロンチウムなどの濃度は、セシウムよりずっと高い。
 食品の基準値には、ストロンチウムを摂取する可能性も織り込んでおり、セシウムより魚介類が取り込む確率はずっと低い。
 それでも、実際に調べないと調査の信頼性は半減する。規制委の担当者は「専門家からも調査すべきだとの指摘があり、検討している」と話すが、まだ具体化はしていない。

(メモ)食品の基準値

 基準値は食品衛生法に基づき、短期間で測定できる放射性セシウムの値で1キログラム当たり100ベクレルと定められ、昨年4月に施行された。放射性ストロンチウムはセシウムと同時に存在することが多いが、測定に1、2カ月かかる。そのため、一般的なセシウムとの濃度比や体内への取り込みやすさ、放射能の強さなどを勘案。測定の容易なセシウム濃度をみることで、放射性物質全体の影響を把握することにした。

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