野外計測しないで、家屋は「放射線を6割遮へい」 国の主張に疑問

 東京電力福島第一原発事故で汚染された地域で、家が放射線を遮る効果を、国がまるで環境の異なる場所の調査で計測した値を基に、算出していたことが分かった。放射線量は除染や住民帰還の目安になるが、この算出方法ではデータのばらつきが大きく、専門家も精度を疑問視している。(大野孝志)

窓際の線量から推計

 国は、住民が避難先から帰る目安として、当面の被ばく線量を年二〇ミリシーベルト以下とし、長期的には年一ミリシーベルト以下としている。これらの目安は、除染を進めるかどうかの判断にも使われている。
 問題なのは、被ばく線量を推定する際に重要となる家屋の遮へい効果の数字だ。国際原子力機関(IAEA)は、鉄筋コンクリートなら屋外の放射線を九割、木造家屋なら六割カットするとしているが、国は日本でも当てはまるかどうかを、独立行政法人日本原子力研究開発機構に調査を委託。機構は調査で、この値の正しさを確かめたという。
 機構はまず、福島県川俣町の五軒で、野外と屋内の窓際の線量を計測、窓際でどれくらい線量が減るかを調べた。その上で、福島市や伊達市など三市二町の百五軒について、窓際の数値から野外の数値を推計し、屋内で測った数値と比べ、家屋の遮へい効果がIAEAの値とほぼ同じと結論づけていた。
 本来は、庭先など野外と、居間など屋内の線量を実際に測って比較すべきだが、そうしていなかった。

「データ少なく、数値は絶対的でない」と機構

 機構の担当者は、野外に多くの線量計を長く置くのは管理が難しいと説明。その一方、「集めたデータがまだ少なく、六割減という数値は、絶対的なものではない」とした。
 本紙は今年八、九月に福島県田村市や川俣町、楢葉町などの二十六軒で実測。木造家屋の遮へい効果は二割ほどとの結果を得た。計測に協力した住民たちは「避難先から帰るかどうかは、十分信用できる根拠を基にして決めたい」と語った。だが、国は本年度も機構に委託し、同様の手法で福島県内の二百軒で測り、家屋が遮る割合を算出するという。

(メモ)国の被ばく線量の推定

 毎時0・23マイクロシーベルト(1マイクロシーベルトは1ミリシーベルトの1000分の1)であれば、自然界から受ける放射線を加味しても、一般人の被ばく線量限度の年1ミリシーベルトにおさまるとされる。1日のうち野外に8時間、屋内に16時間滞在する生活パターンを想定し、屋内(木造)にいれば野外の線量は6割カットされることが前提になっている。除染でも住民の帰還でも、国の長期目標の重要な目安となっている。

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