再稼働より3つの検証 ①原発事故の原因 ②住民の健康影響 ③避難計画の実効性

 新潟県の米山隆一知事は五日、県庁で東京電力のトップと面会し、福島第一原発事故の原因究明など県独自の検証を最優先する考えを伝えた。少なくとも検証が終わるまでの三、四年間、東電の柏崎刈羽原発(同県柏崎市、刈羽村)は再稼働しないことが確定的となった。住民の安全を第一に考えた対応といえる。東電にとっては、再稼働による収益に頼らない経営再建を迫られる。(小川慎一、吉田通夫)

東京電力の(左から)数土文夫会長、広瀬直己社長と会談する新潟県の米山隆一知事(右)=5日、新潟県庁で

詳細な検証 先進的な事例に

 「三つの検証が終わらない限り、再稼働の議論はできない」「検証には数年かかる」
 新潟県庁での知事と東電トップの初の面会はわずか十五分間だったが、米山知事は住民の暮らしと命を最優先する姿勢をやわらかな口調ながら明確に示した。東電の数土(すど)文夫会長と広瀬直己(なおみ)社長は終始、硬い表情だった。
 県が独自に委員会を設けて検証する三つのテーマは(1)福島第一原発事故の原因究明(2)福島事故が与えた住民の健康への影響(3)柏崎刈羽原発で事故が起きた際の住民避難計画の実効性-。
 福島事故の原因究明については、泉田裕彦前知事の時代から進められ、事故発生当初、東電幹部が「炉心溶融」という言葉を使わないよう指示したことなど、新事実を掘り出している。米山知事は県民の安全確保の観点から、新たに福島事故の健康への影響と避難計画の実効性を加えた。
 原発事故は広く深刻な汚染を及ぼす。地方自治体のトップは住民を守る責務がある。三つの検証テーマはきちんと事実を把握し、再稼働の是非を判断する材料にすべきものばかり。自治体レベルでこれほど詳細に検証する前例はなく、先進的な取り組みといえる。
 福島事故の健康への影響については、国や福島県が集めているデータの提供を受けて分析する。避難計画が不十分だと判断された場合は、検証委での議論を通して見直していく。
 一方、東電は経営再建のため、柏崎刈羽原発の再稼働を急ぐ。面会を終えた数土会長は報道陣に「世論はどうなるか分からないし、知事も検証に必要な期間を明確に設定したわけではない」と、引き続き説得していく考えを強調した。
 政府も柏崎刈羽の再稼働には積極的。昨年末、経済産業相の諮問機関「東京電力改革・1F(福島第一原発)問題委員会」(東電委員会)は東電と別の電力会社が出資し、柏崎刈羽原発を共同運営する会社をつくる案を示した。ノウハウを集め、コストを削減するほか、事故を起こした東電のイメージを薄め、再稼働につなげたい狙いもある。

電力各社、東電と組むのは慎重

 しかし、電力会社の中には東電と組むことに慎重な声が多い。ある電力幹部は「利益を上げても福島第一原発の処理に使われてしまい、メリットがないのではないか」と語る。
 原発の運営体制が変わっても、安全性の向上につながるとは限らない。むしろ、責任を負う電力会社はどこか不明確になる可能性もある。面会後、知事は「運営体制が変わるなら、安全に対してどのように影響するのかを見て判断する」と慎重に再稼働の是非を判断する構えを崩さなかった。

(メモ)柏崎刈羽原発

 新潟県柏崎市と刈羽村にまたがる東京電力の原発で、1号機は1985年に運転開始。7基の総出力は計約821万キロワットと世界最大級。2007年の新潟県中越沖地震では、敷地各所で地割れが起き、1号機では地中の消火配管が損傷し、建屋に大量の水が入り込んだ。12年3月以降、どの号機も稼働していない。6、7号機は原子力規制委員会が新基準による審査をしているが、地震時に防潮堤の一部が液状化で津波に耐えられない問題が浮上している。

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