核燃サイクル 膨らむ国民負担 机上の新高速炉で延命

 政府は二十一日、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)の廃炉を決める一方で、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル事業の継続も決めた。この事業には十二兆円がつぎ込まれながら、全く機能していない。フランスと共同研究し、もんじゅに代わる高速炉を開発するというが、実現する確証はない。さらに国民負担を広げる結果になる恐れがある。(山川剛史)

機能不全

 核燃サイクルは、原発で出る使用済み核燃料を溶かしてプルトニウムを取り出し、MOX燃料に再生して原発で再び使う。さらに資源を節約するために構想されてきたのが、もんじゅなどの高速炉だ。
 日本では、青森県六ケ所村に再処理工場とMOX燃料工場の建設が進められてきたが、どちらも未完成。国内でリサイクルの輪は完結しない。稼働中の四国電力伊方原発3号機(愛媛県)や、再稼働後に司法判断で停止に追い込まれた関西電力高浜3、4号機(福井県)が使うMOX燃料はフランス製だ。
 特に、再処理工場は一九九三年に着工しながら、二十三回も完成時期を延期。二〇一八年度上期が完成目標とされるが、どうなるか分からない。燃料工場は一九年度上期の予定だ。
 もんじゅの廃炉決定により、高速炉を中心とする輪は完全に消滅。あらためて日本の現状を見ると、核燃サイクルといっても、通常の原発以外は何の実体もないという現実が浮かぶ。

一輪走行

 核燃サイクルで先行するといえば、フランスだ。五十八基から出る使用済み核燃料は、イギリス海峡に近いアレバ社ラ・アーグ再処理工場で再処理。取り出したプルトニウムは、トラックで南東約八百キロの同社メロックス工場に運ばれてMOX燃料になり、二十二の原発で再利用されている。
 アレバ社のギョーム・デュロー副社長は「原子力に注力する国では、再処理が主力になっていくと確信している」と、核燃サイクルの好調さを強調する。
 その一方で、フランスも手を付けられないでいるのが使用済みMOX燃料だ。ラ・アーグ工場や原発のプールに計約三千トンがたまり、年百二十トンペースで増えている。
 通常の核燃料に比べて冷えるまで時間がかかり、有害な放射性物質が格段に多い。「科学的には再処理が可能」(デュロー氏)ともいうが、実際にはコスト面も含め再利用は難しい。
 フランスは、再処理で出る高レベル放射性廃棄物の最終処分地にめどがつきつつある。だが、原発と高速炉という二つの輪を回す構想は、片方しか実現できていない。

複雑構造

 行き詰まりを解消したいと、日仏両国政府が期待するのが、新型高速炉「ASTRID(アストリッド)」をフランスに建設する計画だ。ただし現状は机上の構想に近い。しかも、複雑な構造のため一兆円以上かかるといわれるのに、出力は六十万キロワットと新しい原発の半分程度しかない。もんじゅで構想されたウラン資源の増殖機能もない。
 もし実現すれば、使用済みMOX燃料に含まれる有害物質を大幅削減できる可能性もあるが、運転開始目標は三〇年ごろ。フランスでの経験を踏まえ、日本にも新型炉を造ろうとすれば、さらに十年単位で先になる。

(メモ) 高速炉

 核分裂反応を起こすために、飛ぶスピードが速い「高速中性子」を使う原子炉の総称。炉心の熱を取り出す冷却材に水を使う一般の原発(軽水炉)と異なり、中性子を減速させないために液体ナトリウムを使う。炉心の周りに増殖用の燃料を置き、使った以上の燃料を生み出すものを「高速増殖炉」と呼ぶ。燃料を組み替え、放射性廃棄物を減らす研究にも使われる。フランスは廃棄物対策に主眼を置いて研究開発を行うが、ロシア、中国、インドなどは燃料増殖志向で開発を進める。

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