福島第一処理 21.5兆円 試算倍増

 経済産業省は九日午前、財界人らでつくる「東京電力改革・1F(福島第一原発)問題委員会」(東電委員会)を開き、福島第一原発の廃炉や損害賠償、除染にかかる費用を二一・五兆円とする試算を正式に示した。二〇一三年にまとめた十一兆円の二倍にのぼる。経産省は電気料金を引き上げるなどして対応する方針で、国民の負担は大きく増加する見通しとなった。

廃炉費用は4倍の8兆円に

 世耕弘成(せこうひろしげ)経産相は終了のあいさつで「議論は取りまとめの段階に入ってきた」と述べた。来週の会合で報告書としてまとめる。
 廃炉費用は一三年に試算した二兆円から、八兆円へと四倍になる。溶け落ちた燃料の取り出しなど世界でも前例のない作業を控え、巨額の費用が必要になると予想した。原子力事業などで他の電力大手との提携を促すなどして利益を生み、資金を捻出する。ただし、東電が生む利益は廃炉に充てられるため、管内の電気料金は下がりにくくなる。
 被災者への賠償は、五・四兆円から七・九兆円に拡大。現在は政府がいったん支払い、東電と大手電力会社の契約者が電気料金から少しずつ支払っている。しかし今後は、「過去の原発費用は本当はもっと高かった」として、「過去分」の費用を原発を持たない新電力の契約者も含めて電力利用者の料金に上乗せする。
 放射線に汚染された土壌などを取り除く「除染」の費用も二・五兆円から四兆円に増加。政府は保有する東電株の売却益という不確かな収入をあてにする方針を堅持しており、不足する場合は国民の負担になる可能性がある。
 さらに、取り除いた土壌などを保管する中間貯蔵施設の建設費は、一・一兆円から一・六兆円に膨らむ。政府は一三年に、電気料金に上乗せしている「電源開発促進税」という税金を充てる方針を決めており、投入する額を増やす。

(解説)国民負担の上限見えず

 経済産業省が、東京電力福島第一原発の処理に必要な費用を二一・五兆円とする試算をまとめた。今後もさらに増える可能性があり、国民にのしかかる負担の上限は見えない。東電を延命させるための支援は限界にきている。
 福島第一原発の処理には、廃炉、事故被災者への損害賠償、汚染された土壌などを取り除く「除染」のための費用が必要で、それぞれが今後も見積額を上回る可能性がある。中でも先行きが見通せないのが廃炉費用だ。事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)を取り出すという世界に前例のない作業を控え、やり方もまだ決まっていない。
 今回は複数の学識者の予想額を基に、廃炉費用は八兆円という数字を仮置きした。原則として東電に捻出させる方針だが、いくら東電が利益を上げても廃炉に回されるため、電気料金が下がりにくくなる。さらに、東電委員会には「将来にわたって安定して廃炉のための資金を捻出する仕組みが必要」と追加の支援策を主張する委員もいる。
 賠償費用については「過去の原発費用は、本当はもっと高かった」として、「過去分」の費用を国民に請求する。事故を起こした東電を生き残らせるため、一般社会では通用しない考え方まで持ち出した。与野党議員や学識者の中には「無理な理屈で国民に負担を求める前に、東電を破綻処理して財産を吐き出させるべきだ」との意見もある。(吉田通夫)

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