玄海原発 新基準「適合」へ 離島 避難計画置き去り

 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県)の再稼働に向け、原子力規制委員会は九日にも新規制基準に「適合」するとの判断を示す。玄海原発三十キロ圏に点在する島々を訪れると、住民は事故時に避難できるのか不安を抱えていた。九電管内の電力需給は余裕がある。「避難計画が問題というより、原発をやめるのが先決だ」との声も聞かれた。(荒井六貴)

困難

 九月下旬、佐賀県唐津市の馬渡(まだら)島に船で向かった。所要時間は約五十分。海上に白波が立ち、船はかなり揺れる。地元の人に聞くと、遠い沖縄に台風が近づいても、海が荒れるという。
 馬渡島は玄海原発の北西に九キロ弱で、約四百人が生活する。事故が起き、荒天のため船で逃げられない場合は、放射性物質を除去するフィルター付き換気装置が整備された小中学校の教室に逃げて一時的にしのぐ。全島民を収容するには、体育館にある蛇腹式テントのシェルターを引き出して設営するという。
 区長の浦丸宏さん(75)は「冬場は海が荒れる。フィルターやダクトは自分たちで取り付ける必要がある。本当に三、四日で島から避難できるのか」と不安を口にした。
 避難計画では、船で対岸の唐津市内の港に向かい、置いてある自家用車か、迎えのバスに乗って内陸方面に逃げる。浦丸さんは「原発に近づくから、避難先を福岡方面にしてほしいと市に要望している。バスの迎えも本当に来るのか」と疑問を投げかけた。
 三十キロ圏には、馬渡島を含め十七の島があり、約一万九千人が暮らす。
 最大の壱岐島(長崎県壱岐市)では、三十キロ圏に入る島南部の住民約一万五千人は、島の北側に逃げる計画。ただ、放射能汚染が三十キロで止まる保証はなく、北部の住民約一万二千人を含めた避難になる可能性もある。一時避難用のシェルターも整備されていない。
 壱岐市の担当者は「船で全島民避難も考えているが、受け入れ先は決まっていない」と話した。

教室内に放射性物質が入り込まないよう、小中学校に整備されたフィルター付き換気装置=佐賀県唐津市の小川島で

余剰

 島民たちが不安を抱える一方、九電管内は、昨年八月と十月に川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)が相次いで再稼働して、電力供給力が増え、ややだぶつき気味。電力消費量は省エネ家電の普及や節電の定着が進み低下傾向だ。
 九電は、東京電力福島第一原発事故で自粛していたオール電化を再び推進し始めている。
 壱岐島で観光ガイドをする中山忠治さん(68)は「まずは原発をやめる算段をしてほしい。電気は困っていないし、原発が止まっていても問題ない。止まっていれば逃げることを考える必要もない」と話した。

数人がかりで設置するテント式のシェルター。放射性物質を防ぐフィルターの取り付けなどもあり、設置が難しい=同市の馬渡島で

矛盾

 原発を動かせば、行き場のない核のごみが増える。全国の原発の中でも、玄海原発は使用済み核燃料プールの容量に余裕がない。3号機は三年、4号機も七年ほど稼働させれば、プールが満杯になる見通しだ。
 使用済み核燃料をどこかに移さない限り、核燃料を交換できず原発は動かせなくなる。
 3号機は別の問題を抱えている。使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムを再利用する混合酸化物(MOX)燃料を使うが、使い終わったMOX燃料には、通常の核燃料より格段に多い有害な放射性物質が含まれる。処分方法も決まっていない。矛盾が深まっていくばかりだ。

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