AtoZ 揺れる原発再稼働

注目される司法判断

 東京電力福島第一原発の廃炉作業もままならない中で、原発再稼働の動きが強まっている。その一方、司法が原発をストップさせる動きもある。4月の熊本地震で日本が地震国だとの認識が深まり、脱原発依存を唱える知事の誕生にもつながった。日本の原発の現状をまとめた。(原発取材班・小川慎一)

焦点は?  安全、避難計画の攻防

 いま日本で稼働している原発は、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)と四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の3号機の三基。
 川内原発を巡っては、鹿児島県知事に脱原発依存を掲げる三反園訓(みたぞのさとし)氏が就任。熊本地震で高まる県民の不安を背に、九電に一時停止を要請したが、九電は応じなかった。定期検査の期間中に、圧力容器を水中カメラでチェックするなどいつもより幅広い点検をするほか、住民避難に使う車を増強することなどで知事の理解を得ようとした。
 ここまでは予想通りの展開。三反園知事は避難計画に実効性がないと認識し、既に計画の見直しを明言した。県独自に専門家を集め、安全性を検証する考えも示している。「安全性に問題なし」とする九電との認識の開きは大きいが、攻防は始まったばかりだ。
 一方、伊方3号機は八月十二日に再稼働。日本一細長い半島の付け根にあり、事故時に半島の住民約五千人が孤立し、原発に支援要員を送り込むことも難しいとの懸念が残る。
 今のところ特にトラブルはないが、地元の愛媛県内だけでなく、海を挟んだ大分県や広島県の住民からも運転の停止を求めた仮処分の申し立てや訴訟が起きている。原発に対する司法の判断は揺れているが、福島の原発事故を機に、原発の潜在的な危険性と科学の限界が裁判官に認識されているのは確かだ。
 司法判断に揺り動かされているのが関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)。昨年四月に福井地裁が運転を差し止める仮処分決定を出したが、同十二月には異議審で決定が取り消され、今年一、二月に再稼働。しかし同三月、今度は大津地裁の差し止め命令でストップ。異議は認められず、大阪高裁での審理に移った。命令が取り消されない限り稼働はできない。長引くとみた関電は、2基とも原子炉から核燃料を取り出した。

「地元」は?  周辺自治体も「当事者」

 直近の動きで注目されるのは、やはり川内原発。三反園知事には原発停止を命じる権限はないものの、1号機は十月、2号機は十二月に定期検査で止まる。二カ月ほどの検査をへて、再び稼働への動きが出てくる。これに知事がどう公約を守ろうとするのかが問われる。
 法的には、原子力規制委員会の保安検査にパスすれば再稼働は可能だが、地元の意向は無視できない。政府のエネルギー基本計画でも「立地自治体等の理解」を得ることが明記。地元がどこまでかは知事の判断に委ねられており、知事が指導力を発揮するポイントになる。
 前知事は県と立地する薩摩川内市だけの同意で再稼働を急いだ。しかし、福島事故で、原発事故の影響は広範囲だと証明され、だからこそ原発三十キロ圏の自治体には避難計画の策定が義務づけられた。再稼働問題の当事者である証しと言える。
 周辺自治体は協議に参加させず、事故のリスクだけ負わせるのが民主的なのか。状況を変えられるのは三反園知事だ。
 他の原発はどうか。新規制基準による審査が終わった川内1、2号機、伊方3号機、高浜1~4号機と実質的に終了した美浜3号機を除き、現在十二原発十八基の審査が進んでいる。
 先行するのは、加圧水型では九電玄海3、4号機(佐賀県玄海町)と、北海道電力泊3号機(北海道泊村)。福島第一と同じ沸騰水型では、東電柏崎刈羽6、7号機(新潟県柏崎市)が優先的に審査されている。柏崎刈羽原発では、「福島事故の検証が終わるまで再稼働の議論はしない」としてきた新潟県の泉田裕彦知事が十月の知事選には出馬しない考えを表明。先行きが見通しにくくなっている。
 老朽化した関電高浜原発1、2号機、美浜3号機は規制委が運転開始から六十年までの延長を認める判断を示しているが、改修工事に数年を要し、工事が終わるまで再稼働はない。

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