「事故なら瀬戸内海死ぬ」 近隣の不安押しのけ 伊方3号機再稼働 

 冷却ポンプの不具合で延期になっていた四国電力伊方原発3号機(愛媛県)が十二日、再稼働した。近隣の高知、大分両県の自治体では反対や慎重な対応を求める意見書が次々と可決され、各地で運転差し止めの仮処分申請が出ている。懸念を押しのけての再稼働となった。 (荒井六貴)

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 ひとたび原発で重大事故が起きれば、その影響は県境には関係なく広範囲に及ぶ。愛媛のほか、地続きの高知、避難先に指定されている大分の各県の自治体で、伊方原発に対してどんな意見表明がなされてきたのか調べた。
 愛媛県内には二十市町あるが、福島事故以降、伊方再稼働に反対や慎重な対応を求めた議会は三つにとどまる。一方、大分では十八市町村のうち十四議会、高知では三十四市町村のうち三十議会が意見書を採択し、両県ではほとんどの議会が懸念を示している。
 この違いは、立地県には交付金や税収などの形で原発マネーが流れ込むのに対し、近隣県には経済的メリットはないのに、リスクだけ背負わされることが影響しているとみられる。

伊方原発のゲート前で抗議する住民ら=愛媛県伊方町で

熊本地震

 四月の熊本地震は、熊本県にとどまらず、大分県にも被害が拡大。九州から伊方原発の北方沖を抜け、本州へと続く長大な断層帯・中央構造線に沿う形で地震活動が活発化した。
 反対などの意見を表明した大分県の十四議会のうち、四つは熊本地震後に新たに意見書を出した。再稼働を再考するよう求めたほか、再稼働に当たっては、愛媛県内だけでなく、自分たちも地元同意に加えるよう求める内容だった。
 伊方原発から豊後水道をはさんで南西約六十キロにある臼杵(うすき)市議会は七月、全会一致で意見書を可決し国に提出した。
 「事故が起きれば、特産の関アジや関サバなどは壊滅、『温泉県おおいた』は大打撃を受ける」。意見書はこう懸念を示し、原発がある佐田岬半島の約四千七百人が大分に避難する計画について「地震や津波など複合災害が起きた時には、受け入れは困難になる」としている。
 意見書の採択に尽力した匹田郁(ひきだかおる)市議(自民)は「原発事故が起きても、四国電では責任は取れない。臭い物にふたはできない」と話した。再稼働の直前になって、原発職員の訓練不足が露呈したり、炉心部の冷却水を循環させる最重要なポンプでトラブルが起きたりしたことに「次々と問題が出てくると、本当に大丈夫なのかと思う。熊本地震で不安が大きくなっているのに…」と指摘する。

安定需給

 原発への懸念が高まる一方、四国の夏の電力需給は伊方原発が再稼働しなくても安定した状況が続いている。
 経済産業省が四月にまとめた今夏の需給見通しでは、四国電の余裕は5・8%と懸念はないものの全国平均(9・1%)を下回る最下位とされた。
 ところが、実際には、再稼働前の七、八月とも10%前後の余裕がある状態が続いている。節電が定着したことに加え、太陽光発電の導入がさらに進み、ピーク時の電力需要の一割を担っている(四国電による予測)ことも大きい。こうした面からも、伊方原発の再稼働の必要性は薄れている。

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