伊方 不安置き去り再稼働 プルサーマルの3号機 近く走る断層帯 避難計画に疑問

 四国電力は十二日午前、伊方原発3号機(愛媛県伊方町)を再稼働させた。東京電力福島第一原発事故を踏まえ策定された原子力規制委員会の新規制基準に適合した原発では九州電力川内1、2号機(鹿児島県)、関西電力高浜3、4号機(福井県)に次ぎ五基目。川内1号機の再稼働から一年たち政府は原発活用を加速させたい考えだが、伊方原発近くには長大な活断層「中央構造線断層帯」が通り、熊本地震を機に活発化する懸念や、事故時の避難計画の実効性に不安も根強い。

伊方原発3号機(右)

 伊方3号機の稼働は二〇一一年四月に定期検査で停止して以来。今後作業が順調に進めば、十三日朝に核分裂反応が安定的に持続する臨界に達し、十五日に発電と送電を開始。営業運転は九月上旬の見込み。高浜が司法判断で運転差し止め中のため、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料によるプルサーマル発電を行う国内唯一の原発となるが、プルサーマルは制御棒の効きが悪くなるともされ、安全面の心配もある。
 十二日、再稼働に反対する住民らが抗議する中、伊方3号機の中央制御室では四国電社員らが計器などを確認。午前九時、スイッチを操作し制御棒を引き抜いて原子炉を起動させた。四国電の佐伯勇人(さえきはやと)社長は「安全確保を最優先に発電再開へとステップを進める」とコメントを出した。中村時広愛媛県知事は記者会見し「考えられる最高の安全対策が施されている。福島と同じことが起こることはない」と強調。世耕弘成経済産業相は「電力の一層の安定供給の確保に向けた重要な前進」と談話を出した。
 伊方原発は細長い佐田岬半島の付け根にあり、事故時に半島の住民約五千人が孤立する恐れがあるなど避難上の課題や、南海トラフ巨大地震対策が不十分との指摘もある。中央構造線断層帯の活発化を危ぶむ住民らが松山、大分、広島の各地裁で運転差し止めを求め仮処分を申し立てるなどしており、今後司法判断で停止する可能性もある。
 3号機は昨年七月に規制委の審査を通過し、同十月に伊方町長、中村知事が再稼働に同意した。今年六月にはMOX燃料十六体を含む百五十七体の燃料集合体が原子炉に入った。再稼働は七月二十六日の予定だったが一次冷却水循環ポンプのトラブルが同十七日に判明し、遅れた。

(メモ)伊方原発

 愛媛県伊方町にある四国電力の加圧水型軽水炉。「日本一細長い」とされる佐田岬半島の付け根に位置する。計3基あり、1977年に運転を開始した1号機(56万6000キロワット)は、多額の安全対策費がかかるなどとして四国電が今年5月に廃炉とした。82年に運転を始めた2号機(56万6000キロワット)は現在、定期検査中。3号機(89万キロワット)は94年に運転を始めた。半径30キロ圏には山口県の一部が含まれ、豊後水道を挟んで対岸の大分県は重大事故時の伊方町民の避難先となっている。

(解説)周辺自治体に広がる懸念・反対

 日本一細長い半島に位置し、事故時には住民避難も収束作業も支援も困難が予想される四国電力伊方原発3号機(愛媛県)が再稼働した。九州から四国を通って本州に至る活断層「中央構造線断層帯」に沿って発生した四月の熊本地震後、豊後水道を挟んだ大分県各地の議会で、再稼働への懸念や反対を表明する動きが広がっている。その一方、暑い日が続く中でも四国の電力需給は安定。無理をしてまで原発を動かす大義は見当たらない。
 いくら地震や津波の対策をしても、原発のリスクはなくならない。一般的な工業施設なら、事故の影響は限定的。広範囲かつ長期にわたる影響が出る点で、原発はやはり別格と言える。
 何度、伊方の地を訪れても、雄大な美しい光景に圧倒される。その半面、尾根筋を走る一本の国道を除けば、道は細く険しく、岩肌ももろい。事故に備えて進めている道路拡幅は未完成のまま。住民避難計画では海を渡って大分などに避難するというが、現実的と受け止めている住民には出会ったことがない。地震が起きたら道は寸断される可能性があるためだ。「港に行く前に、閉じ込められる」と多くの人が語った。
 険しい半島の岩場を切り崩し、埋め立てて造った原発。敷地に余裕はない。事故時の対策拠点も必要最低限の施設で、休むスペースはなく、トイレも仮設が一つあるだけ。福島のような高濃度汚染水問題が起きても、保管するためのタンクの置き場も見当たらない。「新規制基準を満たせば、事故はある程度で止まる」。そんな危うい仮定の上で、伊方原発の「安全」は成り立っている。(山川剛史)

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