汚染土の公共工事再利用 引き受け手見えず

 環境省が東京電力福島第一原発事故に伴う除染で出た膨大な土を全国の公共工事で再利用する方針を決めたことに対し、疑問の声が上がっている。今秋にも福島県南相馬市で安全性を確かめる実証実験を始めるというが、放射性セシウムに汚染された土が受け入れられるのか。福島県内では「結局、県内で使うだけでは」と冷めたムードが漂う。(荒井六貴)

実験

 福島第一の北約十キロ。実験場となる南相馬市小高区東部にある除染土の仮置き場では、大きな黒い土のうを積んだ大型トラックが行き交っていた。
 この一角に遮水シートを広げ、土で流出防止用の堰(せき)を造り、その中に汚染土を入れ、土をかぶせる。その上に、アスファルトやコンクリートを施工し、道路や防潮堤を模したものを造るという。汚染土を覆うことで、周辺住民の年間被ばく線量を〇・〇一ミリシーベルト(一般人の線量限度は一ミリシーベルト)に抑えたいとする。
 実験場の周囲には、地下水や線量を監視する装置を配置し効果を確かめる。
 小高区は十二日に避難指示が解除されたばかり。事故前は、仮置き場近くで花き栽培を営んでいた根本修二さん(64)は「実験場を造ってから、土地を元のように使えるのか。心配だ」と不安を隠せない。

除染土で盛り土を造る実験場の予定になっている仮置き場=福島県南相馬市で

二重基準

 福島県で出ると見込まれる除染土は約二千二百万立方メートル。東京ドーム十七、八個分に相当する。
 国は、福島第一の周辺で進めている中間貯蔵施設に貯蔵した後、三十年以内に県外で最終処分すると法律で約束しているが、これだけ膨大な土の行き場を探すのは厳しい。少しでも量を減らそうと浮上したのが、公共工事で再利用するという今回の構想だ。
 ただ、疑問なのは、再利用するという汚染土が一キログラム当たり八〇〇〇ベクレル以下と高濃度な点だ。この値を超えると、特別な管理を要する放射性廃棄物となり、線量計でもぐっと数値が上がるレベルだ。
 長年、原発などから出た鋼材やコンクリートなどを再利用する基準は、同一〇〇ベクレルに定められてきた。これを一気に八十倍に緩めることになる。
 環境省の担当者は「一〇〇ベクレルは手に触れ、一般に流通していい基準だが、除染土は一般には流通せず、公共工事に用途が限定されるので問題はない」と強調するが、「二重基準」と批判されてもおかしくない。
 原発政策に詳しい九州大の吉岡斉教授(科学技術史)は「基準の底無し化になっている。放射能対策や運搬などの費用を考えても非合理だ。除染土は集中的に隔離するのが賢いやり方ではないか」と指摘する。

難色

 そもそも、高濃度汚染土と分かっていて、引き受け手がいるのかどうか。
 東日本大震災で出た東北地方のがれきを広域処理したケースでも、各地で反対運動が起きた。環境省はきちんと地元の同意を得てから使うというが、詳しくは決まっていない。
 再利用の話がどこまで進んでいるのか、高速道路を計画する国土交通省の担当課に聞くと、「どの土を使いなさいという指示は、今のところ考えていない」と否定的。建設・運営を担うネクスコ東日本の担当者は「現時点では考えていない」と話した。常磐線を管轄するJR東日本水戸支社も「大規模な盛り土工事を実施しないので、除染土は再利用しない」とした。
 仮置き場近くに自宅がある無職滝本武広さん(69)は「本当に県外に引き受け手がいるのかどうか…」と心配する。小高区が地元の渡部寛一市議は「県外の住民が理解するのは難しい。結局、自分たちで使うことになるのでは」と話した。

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