来春避難解除 飯舘で放射能検証 山菜食べる日常遠く 調理後も内部被ばく恐れ

 東京電力福島第一原発事故で、政府は周辺地域の避難指示を次々と解除している。これらの地域では、かつて山菜を採って食べることが暮らしの一部になっていた。住民は避難先から帰って、山とかかわりの深い元の生活に戻れるのか。来年三月末の解除が決まった福島県飯舘村で、日常的に食卓に載る山菜を採って調理し、放射能汚染の心配をせずに食べられるのかどうかを調査・検証した。(大野孝志)

濃度

 村内の山に入り、コシアブラやコゴミ、フキノトウ、ワラビ、タラの芽、ウドの六種類の山菜を採った。調理前と、天ぷらやおひたしなどの調理をした後で、放射性セシウムの濃度がどう変わるのかを調べた。
 結果は表の通り。調理をすれば、確実に値は下がった。ただし、ひとまず食品基準(一キログラム当たり一〇〇ベクレル)を満たすのは、天ぷらにしたタラの芽と、ゆでたウドだけで、他は内部被ばくにつながることが分かった。フキノトウは炒めて水分がなくなった分だけ濃度が上がり、加えたみそでセシウム濃度が薄まり、偶然にも同じ値だった。
 天ぷらにすると美味なコシアブラはどうだろうか。これまでの本紙の山菜調査で、浅く根を張るコシアブラはセシウムを多く吸い上げ、採れた土地の濃度より高くなることもあると分かっている。
 未除染の土地で採れたコシアブラは予想通り九万ベクレル超で、天ぷらにしても四万ベクレル近く。とても食べられない。除染された家屋に近い林で採れたものなら大丈夫では、と期待したが、調理後も一万ベクレルを超えた。調理に使った油も調べたが、油にはあまりセシウムは移行していなかった。結局、天ぷらにすると、値は下がるものの、衣の重さ分だけ見かけ上の濃度が下がっただけのようだ。
 ワラビはお湯に五時間つけて、あく抜きした。お湯にセシウムが出たため、濃度は五分の一近くにはなったものの、元の濃度が九〇〇ベクレル超あったため調理後も食品基準の二倍近かった。
 ゆで時間をもっと増やせば、お湯にセシウムが流れ出し、濃度は下がるはずだが、今度は柔らかくなりすぎ、山菜ならではの食感や風味が失われる。
 ゆで上がって、ふにゃふにゃになった山菜を見て、「これじゃ食用にはならないな」と思った。

汚染された山の中で、コゴミを採取する伊藤さん=5月2日、福島県飯舘村で

帰還

 こんな状態にもかかわらず、政府は次々と避難指示を解除し、復興をアピールしている。この一年だけでも、昨年九月の楢葉町を皮切りに、今年六月には葛尾村と川内村で解除された。七月には南相馬市、来年三月末には今回の調査地点である飯舘村が解除される。
 だが、福島が誇ってきた美しい山や森林をどう回復していくかについては、何も決まっていない。人が日常的に出入りする場所は除染する方針だが、どこまでをどう除染するのか、具体的な計画は未定だ。
 一緒に山菜を採りに山に入った伊藤延由(のぶよし)さん(72)は「村民は、避難指示が解除されると聞けば、山は事故前の状態に戻り、山菜も食べられるのだろうと考えてしまう。だが、まだ食べられない。この悲しい現実を、帰る判断をする前に知らなければならない」と語った。
 測定に協力してくれた独協医科大の木村真三准教授(放射線衛生学)は「山菜の種類や場所、土質、根の張り方などにより、汚染状況は千差万別。事故から五年が過ぎても、油断してはならない。現在の状態を安全というのは間違いで、これからも食べる前に測ることは欠かせない」と話す。

(メモ)調査方法

 5月の連休中、昼間だけ立ち入れる居住制限区域の飯舘村小宮、蕨平(わらびだいら)の両地区の山で、山菜と土を採った。山菜と土は乾燥させた後、独協医科大福島分室(福島県二本松市)の国井伸明技師の協力で、ゲルマニウム半導体検出器を使い、2~8時間かけ、放射性セシウムの濃度を精密に測定した。

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