伊方原発 きょう核燃料装てん 事故時対応 残る不安 来月下旬にも再稼働

 来月下旬の伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の再稼働に向け、四国電力は二十四日、原子炉に核燃料を装てんする作業を始める。新しい規制基準を満たすための設備が整えられたものの、険しいがけ地に造られたため、敷地の余裕はなく、事故時の対策拠点は非常に狭い。周辺住民の避難についても、がけの細い山道が使えるのか、船で逃げられるのかなど不安が残る。(山川剛史、荒井六貴)

がけ

 伊方原発は「日本一細長い」という佐田岬半島の付け根にあり、周囲は切り立ったがけが続く。
 松山市方面から原発への道は二本。尾根の国道と原発の標高差は二百メートル近く、土砂崩れの危険がある。海沿いの道は車のすれ違いも難しく、がけ下から擁壁を建てて道路を拡幅する工事が急ピッチで続いていた。
 二十億円かけた県の工事名は「原発避難・救援道路整備」。住民の避難と、原発に支援の要員と資機材を送るためだが、トンネル工事も含めると、来年度末までかかり、再稼働には間に合わない。
 原発西側には約五千人が暮らす。昨年十一月、避難訓練が実施された。フェリー乗り場に集まり、大分県へと避難する内容だった。参加した民宿経営の女性(67)は「事前に言われていたからできた。いざという時はどうか…」と話す。
 各集落から三十分ほどでフェリー乗り場に集合できるとされる。試しにいくつかの集落から乗り場まで車で走ってみると、道は狭く曲がりくねり、岩肌はもろく、しみ出た水が流れている場所も少なくなかった。
 自分の漁船で避難するという男性(67)は「地震と事故が同時に来たら、必ずどこかで道が途切れる。地域振興のためと分かってはいるが、本当は再稼働なんて嫌なんだ」と話した。

伊方原発の事故対策拠点。狭い上に、トイレも簡易式が1つあるだけ

 段々畑

 原発の施設内はどうか。厳重なチェックを受けて入ると、段々畑のような構造だと実感した。3号機は海抜十メートルの高さにあり、事故対策拠点や非常用発電機は三十二メートル、変電施設は八十四メートルという具合だ。案内役の四電職員は「今いる道は使用済み核燃料プールとほぼ同じ高さ。福島の時みたいに(上方約三十メートルの)注水に苦労することはない」と話したが、土地の狭さの裏返しでもある。
 新設の対策拠点は分厚い鉄筋コンクリート造で、周りには放射性物質が入り込まないよう、室内の圧力を保つための無数のボンベが並んでいた。
 ただ、約二百平方メートルの室内は想像以上に狭い。事故時は最大九十七人が寝泊まりし危機に立ち向かうが、休息スペースも汚染を洗い流すシャワーもない。トイレも簡易式が一つだけ。案内役も「九州電力川内原発の事例を参考にしたが、確かに狭い。使うことがないよう万全を期します」。
 がけを切り開いてヘリポートや資材の備蓄用地に、テニスコートをつぶして電源車の駐車場-。狭さとの苦闘が続いていた。

 包囲網

 熊本地震が起き、伊方原発近くの海底を抜ける長大な断層帯「中央構造線」での地震が懸念される。司法の場で再稼働の禁止を求める動きが広がっている。
 松山市の市民団体「伊方原発をとめる会」は五月末、「熊本地震で緊急性が出てきた」と、訴訟に加えて仮処分を申し立てた。
 県外でも、地震前の三月十一日に広島県の被爆者らが広島地裁に提訴と仮処分を申し立てた。対岸の大分県でも、再稼働前の七月中旬にも、大分地裁に運転禁止の仮処分を申し立てる準備が進む。市民団体「脱原発大分ネットワーク」の小坂正則・事務局長(62)は「熊本地震後、二十人近い弁護団ができた。関心が高まっている」と語った。

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