「圧力容器すら危険」認識 第三者委報告書  東電主体の調査 限界も

 原子炉の中心が溶けた状態を「炉心損傷」と言うことで、東京電力は事故を小さく見せようとしたのか。福島第一原発事故の当初の広報対応をめぐる問題は、東電の委託を受けた第三者検証委員会の調査で、当時の社長が「溶融」を使わないよう指示していたことが判明。ただ、社内では、炉心どころか圧力容器も危ういと認識していた。 (山川剛史、荒井六貴)

テレビ会議で「溶融」「メルト」が飛び交う

 政府事故調の調書や東電テレビ会議の取材記録などをひもとくと、東電も官邸も経済産業省原子力安全・保安院も事故発生初日の夕方段階で、もはや福島第一の状況は「溶融」か「損傷」どころではないことを明確に認識していることが分かる。
 1、3号機で次々と水素爆発が起き、十四日には2号機でも炉圧が上昇。十四日夜、炉への注水もできない中、東電本店と福島第一の免震重要棟を結んだテレビ会議では、表のように「炉心溶融」「メルト(ダウン)」などの用語が飛び交っていた。
 「(核燃料が)むき出しになったところから約二時間で炉心溶融。その後、二時間ほどでRPV(圧力容器)の損傷になるだろう」
 「二時間でメルト、(さらに)二時間でRPV損傷の可能性あり」
 この日の会議には、清水正孝社長や勝俣恒久会長、武藤栄副社長(いずれも当時)も出席していた。
 このやりとりの後、武藤氏は記者会見に向かい、その席に、清水社長は広報担当者を向かわせ、「溶融」は使わないよう指示するメモを差し入れたという。
 「溶融」は炉心全体が溶けていることを連想させるため、「損傷」や「燃料ペレットの溶融」という表現にしたという。
 しかし、現実はもっと深刻で、熱く溶けた核燃料が分厚い鋼鉄製の圧力容器を突き破り、外側の格納容器にまで流れ出そうとしていた。圧力や内部の爆発で格納容器も壊れれば、膨大な放射性物質がまき散らされるところだった。
 検証委は一定の成果を上げたものの、メンバーの選定や依頼の主は東電。これで「第三者」と言えるかどうか疑問が残る。
 報告書では、清水社長が「溶融」を使わないよう官邸から指示されたと話していると明記しておきながら、「調査権限がない」として、当時の官邸関係者に対する裏取りの努力を一切していない。
 当時、官房長官だった民進党の枝野幸男幹事長は十六日、「私は東電にそんなことを求めていない。私自身が当時の記者会見で炉心溶融を認める発言をした。ブレーキをかけるなどあり得ない」と述べ、菅直人元首相も「東電に指示したことは一度も無い」と報告書の指摘を否定した。
 舛添要一都知事の政治資金の私的流用問題でも、舛添氏の依頼による第三者委が登場したが、ここでも裏取りの問題が指摘された。調査の代表を務めた元検事の佐々木善三弁護士は、東電の検証委のメンバーでもある。

第三者検証委員会の田中康久委員長(左)から報告書を受け取る東京電力の広瀬直己社長=16日午後、東京・内幸町で

福島の首長 厳しい声 「隠蔽体質」「信用できない」

 東京電力が福島第一原発事故当初、炉心溶融を過小評価していた問題に関する第三者検証委員会の報告書を巡り、福島県の自治体の首長から「隠蔽(いんぺい)体質は明らかだ」「事故当時から信用できないと思っていた」などと厳しい声が上がった。
 今も避難区域が残る南相馬市の桜井勝延市長は「炉心溶融の過小評価について当時の社長からの指示があったことに言及しており、東電の隠蔽体質があらためて明らかになった」とコメント。全町避難が続く浪江町の馬場有(たもつ)町長は、都内で記者団の取材に応じ「東電の言っていることは信用できないと当時すでに思っていた。徹底的に情報公開をして説明責任を果たさなくてはならない」と述べた。

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