高浜原発停止命令 甘い新基準を批判

 再稼働が認められた関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転を差し止める仮処分決定が九日、大津地裁から出された。稼働中の原発を止める異例の決定だ。自治体任せになっている避難計画づくりを国主導に変えるよう求めるなど、国や原子力規制委員会の安全への甘い姿勢を批判する内容になっている。(山川剛史)

関西電力高浜原発3号機(左)と4号機=福井県高浜町で

「福島事故」想定より後退

 原発の新規制基準は、東京電力福島第一原発事故を踏まえ、想定すべき地震動や津波の大きさを見直し、非常用電源や電源盤が水没しないよう建屋の防水性を強化した。電源や原子炉を冷やす注水ルートも複数用意させ、講じた対策が突破されることを前提に、国際的な基準にも合致するものになるはずだった。
 しかし、新基準の策定からこれまでの動きを振り返ると、いくつか重要な点で当初目指したはずの内容より後退している。
 最大の問題点は「新基準さえ守れば、事故は一定程度で止まる」という前提をつくってしまったことだ。
 対策を突破され、より深刻な事態になる可能性はあり、最後には周辺住民を避難させるしか手がない-ことを想定するのが国際原子力機関(IAEA)の考え方。日本でも国際基準に沿って新基準を策定するはずだったが、基準をまとめる段階で変わってしまった。
 新基準では、事故によって原子炉の炉心が高温で溶けてしまう炉心溶融までは想定しているが、原子炉内の圧力を下げるために汚染蒸気を排出するフィルターつきベント(排気)設備を動かし、多重化した炉心への注水ルートを確保することにより、原子炉を覆っている格納容器が大きく損傷するような最悪の事態にはならない-ことが前提になった。
 このため、事故によって放出される放射性物質の想定量も、実際に福島事故で放出された量より格段に少なくされた。
 今回の仮処分決定では、「新基準は福島の事故を踏まえており、福島のような事態にはならない」という関電や規制委の姿勢を「非常に不安を覚えるものといわざるを得ない」と批判している。

避難計画含めた基準を要求

 もう一つの問題は、住民の避難計画だ。新基準では、計画づくりは原発三十キロ圏の自治体任せになっているほか、その計画で本当に住民が安全に避難できるかどうか、規制委は「権限外」を理由にチェックしないことになっている。
 九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)のケースでも、国の関与は内閣府が避難計画づくりをサポートしただけで終わった。事故は途中で止まることを前提とした規制委の審査を見て、鹿児島県知事が「避難計画がワーク(発動)することはない」とも発言した。
 仮処分決定は、こうした避難計画づくりのあり方にも疑問を投げ掛け、「国家主導での具体的で可視的な避難計画が早急に策定されることが必要で、避難計画も視野に入れた幅広い規制基準が望まれる」と指摘した。
 今回の決定に対し、規制委の田中俊一委員長は九日の記者会見で「中身を承知していないので、申し上げることはない。規制委が被告ではないので、今後の審査に影響はない」と述べた。
 新規制基準に住民の避難計画の審査を盛り込む考えはないのかと問われると「ない」と明言した。

3号機きょう停止

 仮処分決定は民事保全法に定められた手続きで、時間がかかる通常の訴訟で争う間に著しい損害や急迫の危険が生じるのを避ける必要から、当事者の申し立てに基づいて裁判所が審理、可否を判断する。審理は通常の訴訟より迅速に進み、効力も決定後直ちに生じる。
 このため高浜原発3、4号機は九日の大津地裁決定に伴って運転できなくなり、関電はトラブルなく営業運転を続けている3号機の運転を十日に停止する。
 決定の効力を止めるには執行停止を地裁に申し立て、原発の停止によって「償うことのできない損害」が出ると明らかにする必要がある。
 関電は昨年四月に3、4号機の再稼働をいったん差し止めた福井地裁決定に対しても、同じ福井地裁へ執行停止とともに不服申し立て手段の「異議」の手続きを取り、別の裁判長の判断を求めた。今回も同様の流れになる見通し。

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