福島 終わらぬ除染 道路脇 軒先 線量が再び上昇 山間部 放射性物質 風雨で移動

 東京電力福島第一原発事故で飛散した放射性物質を除去する作業(除染)を終えた福島県の山あいの地域で、除染後しばらくすると放射線量がまた上がるケースが出ている。風雨で運ばれた放射性物質が、道路脇や軒先に再びたまり、線量を上げているとみられる。除染の難しさが顕在化した形で、住民からは「何度除染すればいいのか」と悲鳴にも似た声が上がっている。(榊原智康)

 福島市東部の大波地区では、半年前に除染したが、局地的に線量の再上昇が起こっている。町会長を務める栗原俊彦さん(71)の測定では、ある民家の軒先では事故後、毎時一〇マイクロシーベルト(〇・〇一ミリシーベルト)以上の線量があり、今年三月に除染で一・八マイクロシーベルトにまで低下した。だが、十月には七・八マイクロシーベルトにまで戻った。
 別の民家前の道路脇でも、除染で一・五マイクロシーベルトに下がったが、十月には一〇マイクロシーベルトにまで上昇した。
 いずれの値も地表付近の値で、腰辺りの高さだと値はぐんと落ちるが、生活圏に線量を放つ物質が残っていることが不安材料であることに変わりはない。
 同市の除染担当者は「屋根や雨どいの除染で、取り切れずに残った放射性物質がはがれて、雨で下に移動し、軒先などに濃縮された可能性がある」と分析する。大波地区では、民家の除染は進んだが、地区の大部分を占める森林はほぼ手付かず。山の斜面から水や土砂が流れ込むような道路脇などでは、除染をしても、また放射性物質が流れ込み、線量の再上昇につながっているとみられる。
 山のふもとにある福島市渡利地区でも除染した道路の側溝に再び砂などがたまり、三~四マイクロシーベルトの線量に上がった場所がある。
 市役所の出張所などの計測データでは、除染後は大波、渡利両地区とも線量が大幅に下がっている。ただ、除染後に線量が再上昇する地点があるのは事実で、きめ細かな対応が必要になる。東北大の石井慶造教授(放射線工学)は「ある程度汚染されてしまった地域では、除染は一度では終わらない。息の長い取り組みが必要だ」と話している。

「不安あるが…」住民ため息 専門家「集めて排除など工夫を」

 除染をしても、また放射線量が上がってくる-。福島県内の除染地域で、そんな実情があると聞き、比較的に除染が早く進む福島市大波地区を、町会長を務める栗原俊彦さん(71)と歩いた。(榊原智康)
 大波地区は、JR福島駅の東五キロの山あいに位置し、市内でも比較的空間線量が高かった地域だ。面積の約八割が森林で、民家の脇に山が迫る。
 この日は、市道の側溝にたまった泥や葉などを取り除く作業が進められていた。底にたまる泥に線量計を近づけると、値は毎時一〇マイクロシーベルトを超えた。一般人の年間被ばく線量限度(一ミリシーベルト)を毎時の値に換算すると〇・二三マイクロシーベルト。予想以上に高い値に驚かされた。
 周りの森林は除染されていない。どうも森林が放射性物質の「供給源」になっているようだった。栗原さんは「時間がたてば、市道の両側の山から、雨に流されてまた砂が落ちてくる。何回除染をすればいいのか」と表情を曇らせた。
 軒先下の地表の線量が再上昇した家では、高校三年と中学三年の二人の息子をもつ男性(48)が「避難するにしてもお金がかかる。不安はあるが、ここで暮らすほかない」とため息をついた。
 幸いなことに、家の敷地全体で線量が高いわけではなく、地上一メートル付近で測ると、高いところでも毎時〇・五マイクロシーベルト前後だった。決して安心できる値ではないが、局所的な現象で、その場所に立ち続けることでもなければ、過剰に心配することもなさそうだ。福島市の担当者は「生活空間全体でみれば、除染の効果は保たれている」とみる。ただし、雨などの影響で線量が下がる所もあれば、逆に上がる所もある点は注意が必要だ。
 東北大の石井慶造教授に対処法を聞くと、「まずは線量が上がりやすい場所を把握すること」と指摘。その上で「簡単な溝を掘ったり、集水ますを設けたりして放射性物質がついた泥などを集め、それを取り除く方法で除染すればいい。今まではやみくもにやってきたが、今後は工夫が必要だ」と訴えた。

側溝にたまった泥を取り除く作業員=福島市大波地区で

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