高効率の設備増え、石炭火力維持に 橘川武郎・国際大大学院教授<石炭火力から問う>

地球温暖化を抑えるには、石炭など化石燃料による発電を大幅に縮小し、全廃を目指す必要がある。政府は7月に非効率な石炭火力発電所を段階的に休廃止する方針を示した、国際大大学院の橘川武郎教授は「高効率な石炭火力を使い続けるという宣言だ」と指摘する。(渡辺聖子)

―石炭火力発電所を巡り、国は7月に、非効率の休廃止と、輸出の要件の厳格化を打ち出した。

非効率の休廃止は、政策転換ではない。第5次エネルギー基本計画に書いてある。輸出の条件が厳しくなったのは間違いないが、輸出自体が脱炭素に真面目に取り組んでいることになる。極めてうまい抜け道だ。

―見直しの意図は何か。

世論をかわすのが大きい。一方で、高効率の設備は増えるので、国際社会からみれば、高効率の石炭火力はやっていくよ、という宣言になる。原発が動いていなくて非効率を持つ割合が高い電力会社と、自家発電としての石炭火力を持っている会社の二つが抵抗勢力となるだろう。

―国は、先着順だった送電線の利用ルールの見直しを発表した。

政策転換と言える。先に接続した非効率の石炭火力に、再生可能エネルギーが後回しにされるのはおかしいという理屈で、新しい理論の立て方だ。先着順を変えることは評価できる。これをやると、相当な量の再生エネが入ってくる可能性がある。

―今回の石炭火力の動きを踏まえ、視野に入ってくる2050年の電源構成をどう考えるか。

二つの考え方がある。一つは炭素税や排出量取引などにより炭素に価格を付ける「カーボンプライシング」を重くして、電化に特化していくこと。再生エネ80%、原子力10%、火力10%。ただ、抵抗は強いだろう。もう一つは、カーボンプライシングをそこまで重くしないで、再生エネ50%、火力は全てに排出するCO2の回収と貯蔵の技術を付けて40%、原子力10%。大きく考えると、この二つのせめぎ合いではないか。

―日本の再生エネと原子力の可能性をどうみる。

太陽光と洋上風力が伸びる。世界は再生エネがかなりの勢いで伸びているが、価格競争で安くなっているからだ。日本も価格が下がれば、再生エネの普及が進むはずだ。原発が続くか終わるかは、使用済み核燃料の最終処分の問題次第。解決できれば、脱炭素の手段として有効な武器となる。ただ、原発は新増設ができたとして4基程度で、今世紀の成長ビジネスは建設ではなく、明らかに廃炉だ。かなりの確率で50年には原子力がゼロになっているだろう。

きっかわ・たけお 1951年生まれ。東京大、一橋大大学院、東京理科大大学院の教授を経て、現在は国際大大学院教授。専門は日本経営史、エネルギー産業論。国のエネルギー基本計画を取りまとめる経済産業省総合資源エネルギー調査会の委員を務める。

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