原子力、火力に頼らない道を 大野輝之・自然エネルギー財団常務理事<石炭火力から問う>

地球温暖化を抑えるには、石炭など化石燃料による発電を大幅に縮小し、全廃を目指す必要がある。政府は7月に非効率な石炭火力発電所を段階的に休廃止する方針を示した。自然エネルギー財団の大野輝之常務理事は「化石燃料に依存した政策からの転換が必要だ」と話す。(小川慎一)

大野輝之・自然エネルギー財団常務理事(財団提供)

-政府方針をどう評価する。

非効率な石炭火力を休廃止しなければ、2030年度の電源構成で石炭は政府目標の26%すら超え、30数%になるので、意味はある。しかし、二酸化炭素の排出量が大して変わらない高効率の設備を使い続けるとしており、このままでは、石炭火力の推進策に終わってしまう。

-再生可能エネルギーを増やすために送電線の接続ルールを見直す。

東京電力が進める「ノンファーム接続」を全国展開し、先着優先ルールを見直すのは画期的な方向だが、どれくらいのスピードで政策を進められるかが重要だ。自然エネルギー財団は8月、将来の電源構成の提案をまとめた。現状の政策でも30年度に再生エネは30%程度に、さらに転換促進と省エネも進める政策にすれば、45%にできると見込んでいる。化石燃料の輸入には19年で4.5兆円が使われたが、これで約1兆円を削減できるだろう。国富の流出を減らし、電気代も下げられる。

-再生エネへ転換促進させる財団の提案では、石炭火力と原発はゼロとなっているが、可能なのか。

東電福島第一原発事故があり、温暖化による気候危機が現実になる中、原発と化石燃料に頼らない道を選ぶ必要がある。そこで30年度の電源構成を、再生エネ45%、天然ガス54%などとする考え方を示した。天然ガスは価格が下がったうえ、10年ほどは安定すると予測されている。他の化石燃料よりも二酸化炭素の排出量が少なく、再生エネ中心への移行期間では大切な役割を果たす。

-電源構成を左右する国のエネルギー基本計画が、来年見直される。

これまでは化石燃料を中心に考え、「日本は資源小国なので、準国産の原子力が必要だ」と強調されてきた。だが、現実は劇的に変わった。自然エネが安く、大量に供給できるようになり、気候危機の中で、化石燃料はあっても使えない時が遠からず訪れる。過大に見積もった電力需要や、当てにできない原発再稼働を前提とした目標は、現実から大きくかけ離れている。化石燃料に依存したエネルギー安全保障という概念も、通用しなくなる。その移行過程にいると理解して再生エネ中心の道筋をつけることが、次のエネルギー基本計画の役割となる。

おおの・てるゆき 1953年生まれ。東京都職員として「ディーゼル車NO作戦」の企画立案や「温室効果ガスの総量削減義務と排出量取引制度」の導入などを担当。2010年7月から環境局長を務め、13年7月に都を退職した。13年11月より現職。

ノンファーム接続とは?

再生可能エネルギーの発電所と送電網をつなげる仕組みの一つ。空き容量がある時は送電できるが、混雑時は送電が制限(出力制御)される。常に送電できる仕組みは「ファーム接続」。東京電力が2019年から千葉など一部地域で試行的に導入し、国は21年中の全国展開を目指している。現状のルールは先に接続している電源を混雑時でも優先しているが、新規の再生エネが不利になるため、政府は7月に見直しを表明。二酸化炭素を大量排出する非効率な石炭火力が優先されないよう、環境性の低い電源から出力制御するルールに変えて、再生エネの導入を促す方針。

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