原発の必要性 政府は説明を 山地憲治・地球環境産業技術研究機構副理事長・研究所長<石炭火力から問う>

日本は電源の3割を石炭火力に頼るが、二酸化炭素を大量に排出するため、地球温暖化対策のため大幅な削減が避けられない。政府は7月、非効率な石炭火力発電所を段階的に休廃止する方針を示した。地球環境産業技術研究機構の山地憲治副理事長・研究所長は「石炭火力の比率を下げられるかは、原発次第だ」と指摘する。 (小川慎一)

-政府方針への評価は。

非効率な石炭火力の段階的な休廃止は第5次エネルギー基本計画に沿っており、驚くことではない。本州と電気を融通する連系線がない沖縄と、自家発電を持つ鉄鋼業などは影響が大きい。非効率でも、発電量が変動する再生可能エネルギーの調整力として使えるので生き残り方はある。

-2030年度の電源構成に向けて、石炭火力の比率を下げられるか。

原発がどれくらい再稼働するかによる。電力需要の基底を支えるベースロード電源として、日本は石炭火力と原子力を据えている。燃料価格が安く、安定しているからだ。再生エネも安いというが、まだ安定的に供給できない。天然ガスも価格が下がっているが、過去を見ると変動しており、リスクがある。

-30年度の電源構成で原発は20~22%としているが、実現できるか。

30基ぐらい再稼働すれば達成できるだろうが、東京電力福島第一原発事故後の国民的な不安、裁判による停止など不確実性が大きすぎる。再稼働で二酸化炭素の排出量も減っているので、石炭火力を減らすのと並行して、政府は原発の必要性を説明すべきだろう。

-再生エネは30年度の目標を達成できるか。

政府は24%という目標を引き上げるだろう。太陽光が見込みより増えるのは確実。ただ、パネルは中国製で、土地造成など中小のビジネスはできたものの、産業ができていない。カギは洋上風力発電だ。港、船、土木、電線設備などのサプライチェーン全体が、原子力に匹敵する産業になる可能性を秘めている。火力、原子力も産業になったからこそ、メーカーが育った。

-温暖化対策で石炭火力全廃を求める声もある。

現状、石炭火力や原子力など多くのオプションを持っておくことが大事だ。二酸化炭素を煙突から出る前に回収し、地中に埋めたり、再利用したりするCCUSの技術が確立すれば、化石燃料発電の見方も変わる。50年の温室効果ガス削減目標を達成するためには、CCUSはお金がかかっても考えざるを得ない。

やまじ・けんじ 1950年生まれ。電力中央研究所を経て、東京大名誉教授、地球環境産業技術研究機構の副理事長・研究所長。専門はエネルギーシステム工学。国の審議会委員を歴任し、東京電力福島第一原発事故の民間版事故調査委の委員を務めた。

パリ協定とは?

京都議定書に代わる地球温暖化対策の国際協定で、2020年1月から本格始動。今世紀後半に世界の温室効果ガスの排出を実質ゼロにし、産業革命前からの世界の平均気温の上昇を2度未満、できれば1.5度に抑えることを目標とした。発展途上国にも対策を義務付けた枠組みだが、主要排出国の米国は19年11月、国連に協定離脱を通告した。19年12月の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)で実施ルールが議論されたが、一部の合意が先送りに。20年11月に英国で予定されたCOP26は新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期された。

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