温暖化対策先進国への試金石に 高村ゆかり・東京大教授<石炭火力から問う>

地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を大量に出す石炭火力発電所を巡り、梶山弘志経済産業相は7月、非効率な発電所を2030年度までに段階的に休廃止する方針を打ち出した。再生可能エネルギーの導入加速のために送電線の利用ルールも見直し、電源の脱炭素化に向けてようやく一歩を踏み出す。現状や課題を、石炭火力の休廃止を検討する政府委員会の委員に聞いた。 (渡辺聖子)

―非効率な石炭火力発電所の休廃止をどうみる。

国の第5次エネルギー基本計画に書かれながら、手をつけないできた。非効率をゼロに近づけるのは、かなり大きな方向転換だ。

―今後の課題は。

高効率のもの、これから建つものをどうするのかは、答えが出ていない。日本も2050年以降できる限り早い時期に脱炭素社会を実現するため、説明しないといけない。非効率については、比較的規模の小さい電力会社や重化学工業の企業が持っている。カーボンプライシングを入れたほうが、柔軟にエネルギー転換できるのではないか。

―環境省の「輸出への公的支援に関するファクト検討会」で座長を務めた。検討会を振り返ると意義は。

エネルギー、脱炭素、ビジネスの動向を最新データに基づき整理し、他省庁と共通認識をつくった。事業者へのヒアリングで、輸出先のアジア市場が小さくなって、メーカーの競争力がない実態が分かった。だからこそ、国も輸出の支援要件を見直した。

―日本は温暖化対策の先進国になれるか。

可能性はある。ここ1、2年で状況は変わった。カーボンプライシングを主張する企業が出てきて、電力会社も再生可能エネルギーに力を入れ始めている。非効率の石炭火力の休廃止と、国が打ち出した送電線の利用ルールの抜本的な見直しが試金石だと思う。

―原子力については。

稼働原発の二酸化炭素排出はゼロに近い。化石燃料が主軸で再生エネのコストが高かったころは、温暖化対策の一つという論理に説得力があった。しかし、再生エネが安くなる一方で、原子力は安くなっておらず、説得力に欠ける。原子力は事故や使用済み核燃料のリスクも評価しないといけない。

国は30年度の電源構成で原発を20~22%としたいとしているが、再稼働できるものが動いても無理。原発を新増設するのか、しないのか。50年の姿を示さないと、事業者も何に投資していいのか分からず、原発は宙ぶらりんだ。このままいけば、原発は老衰、自然死を迎えることになる。

たかむら・ゆかり 1964年生まれ。龍谷大、名古屋大大学院教授などを経て、現在は、東京大学未来ビジョン研究センター教授。専門は国際法学・環境法学。環境省の中央環境審議会委員、東京都環境審議会会長などを務める。

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