「容量市場」の参加に制限を 松村敏弘・東京大教授<石炭火力から問う>

地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を大量に出す石炭火力発電所を巡り、梶山弘志経済産業相は7月、非効率な発電所を2030年度までに段階的に休廃止する方針を打ち出した。再生可能エネルギーの導入加速のために送電線の利用ルールも見直し、電源の脱炭素化に向けてようやく一歩を踏み出す。現状や課題を、石炭火力の休廃止を検討する政府委員会の委員に聞いた。 (渡辺聖子)

―国は7月、石炭火力発電所の輸出の要件を厳格化するとも発表した。

輸出先の途上国の効率性を上げれば、CO2排出量は減るから国際貢献だと言ってきたが、著しく国益を損ねたと思う。遅まきながらでも、軌道修正したことは、高く評価すべきだ。要件の例外がむやみに拡大しないよう考える必要がある。

―石炭火力をどう減らしていくべきか。

一番素直なのは、炭素税を上げること。ただ、よほど上げないと、動いているものを止める動機にならない。徐々に稼働率を下げるために、弊害になるものをのぞけないか。(電気の使用量が落ちる)春や秋に、石炭をたくのをやめる。発電を止める自家発電に対し、「再生可能エネルギー発電促進賦課金を減免する」と言ってもいい。

さらに強力な考え方としては、「容量市場」に石炭火力の参加上限を設けて、少しずつ制限していったらどうか。市場から利益が入らないとなったら、たたむところが出てくるのでは。古い非効率の石炭火力は、市場の影も形もない時代に造られた。市場から入る利益は、いわば棚ぼたの利益だ。事業者は猛反対だろうが、消費者には納得してもらえるのではないか。

―将来の電源構成をどう考える。

割合を決める必要はない。1番コストが安いものが生き残る。CO2の排出が問題であれば、今よりも炭素税を課せばいい。最終的には割合は市場競争で決めればいい。それぞれの価値に応じた金額を得て、最適な割合になるのが理想だ。

―再生エネについてはどう考える。

太陽光と風力のほかに、資源量から地熱に期待する。しかし、農林水産省、環境省、地方自治体の3重の規制の弊害が大きい。地熱資源がある場所は保安林で、ほとんどが国定公園の中だ。近くに温泉地があり、温泉が枯れることを心配する事業者の反対を受けやすく、リスクが高い。国は普及策として固定価格買い取り制度を導入したが、リスクを国と事業者で負担して開発を後押しするほうが増えるのではないか。

まつむら・としひろ 1965年生まれ。東京大、東京工業大などで教え、現在は、東京大社会科学研究所教授。専門は産業組織論。経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会委員など、国の複数の委員会で委員を務める。

容量市場とは?

電力不足に備え、発電した電気ではなく、発電所の供給力に応じて電力会社などに対価が支払われる制度。2020年7月に初の入札があった。4年後に運転している発電所に、あらかじめ資金の分配を確約する。原資は、消費者が払う電気代。固定価格買い取り(FIT)制度の対象となっている再生可能エネルギーは対象外。古い石炭火力や原発を温存させる面がある。

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