日本の「石炭火力」比率の低下は困難 米分析会社研究責任者に聞く

 石炭火力発電所は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を大量に出す。政府は7月、非効率な発電所を2030年度までに段階的に休廃止する方針を示した。再生可能エネルギー拡大も目指すが、可能なのか。米国の分析会社は、日本の石炭火力の比率を下げることは困難で、わずかに増えると予測。研究責任者のアレックス・ウィットワース氏に聞いた。(福岡範行)

―30年の日本の電源構成の予測は。

 風力や太陽光の発電所への投資は30年までに1000億ドル(10兆円)を超え、再生エネは大幅に成長し、電源構成の27%を占めると予想している。風力や太陽光の発電コストは今後10年で、30%以上は下がるだろう。天然ガス火力発電はコストが高くなると予想され、稼働率を下げるだろう。
 一方、石炭火力発電は、オーストラリアなど太平洋地域の低コストの石炭に対するアクセスの良さなどから、30年時点でもコストは安いと思う。日本政府は石炭火力の比率を26%まで下げる目標を立てているが、非効率な(旧式の)石炭火力の休廃止を大幅に進めることは、電力需要の低下、他の電源への投資や成長がないと困難だ。
 原発は厳しい安全基準などで、政府の目標達成は難しい。となると、日本は温室効果ガスの削減目標を達成できず、石炭を扱う工場をもっと閉鎖すべきではないか、という議論が高まりをみせることになる。

―国際的には再生エネのコストが下がり、普及が進む。日本はなぜ高いのか。

 耐震性などの安全基準が高いこと、承認に時間がかかるため資金調達コストが高くなること、土地代や人件費が高いことなどが考えられる。ただ、今後のコスト低下で、太陽光や陸上風力は天然ガスに匹敵するようになる。洋上風力も可能性がある。太陽光や陸上風力は不安定だとされるが、それを克服するのが洋上風力。いずれは石炭分のベースロード(基幹)電源をカバーできるのではないか。

―求められる政策は。

 コロナ禍で燃料価格が大きく下がったことで、企業は消費者に大きな負担をさせずに再生エネの投資を増やせる。それには、政府の後押しが不可欠。成長を加速させるには、補助金や規制面での支援を強化する必要があるだろう。これは、化石燃料による発電を減らす選択でもあり、非常に困難な政治決断だ。石炭火力の閉鎖は環境には良いが、関係企業や労働者には負の影響を与えるだろう。

アレックス・ウィットワース氏=ウッドマッケンジー提供

アレックス・ウィットワースさん 1978年、ニュージーランド生まれ。コンサルティング会社や電機メーカーなどで10年以上、アジアのエネルギー市場の分析などを担当。2019年2月から、保険会社などにリスク情報を提供するデータ分析会社「ベリスク・アナリティクス」の天然資源産業関連部門「ウッドマッケンジー」に所属。アジア太平洋地域の電力・再生可能エネルギーの研究責任者を務める。

関連記事