ふくしまの10年 新天地にそよぐ風 ⑨自分で生み出す達成感

楢葉町を流れる木戸川でサケの採卵事業を手伝った森雄一朗さん

 東京電力福島第一原発がある福島県双葉郡には、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村の6町2村がある。
 原発事故後の避難対応は、国や自治体、東電による現地対策本部(オフサイトセンター)が機能せず、各自治体に委ねられ、混乱を生む原因となったと指摘されている。
 町づくり会社「ならはみらい」で働く森雄一朗さん(25)の目には、今も自治体間の連携が足りないように見える。
 「『ならはみらい』のような町つくり会社は双葉郡のすべての自治体に設立されました。ところが視察ツアーを案内するような仕事でも自治体間の壁がありました」
 問題だと感じた森さんは、昨年から他の自治体の町つくり会社に協力を呼び掛け、初めて双葉郡を縦断するツアーの道筋をつけた。
 その念願のツアーは、震災から10年目の今年3月に実施される予定だったが、新型コロナの影響で中止に追い込まれてしまった。
 「本当に残念。でも同じ問題意識を持った人がほかにもたくさんいるとわかった。それだけでも大きな一歩です」
 被災地で働く面白さは、何をするにもゼロから始まることだという。自分が動かなければ何も動かない。それだけに、動いたときの達成感は大きい。
 「だからなのか、新しく何かを生み出そうと頑張っている人が本当に多い。そのエネルギーはどこから生まれるのかと驚くほどです。楢葉町に来たら、そういう人を見てほしいと思うぐらいです」
 高校時代の部活や受験勉強などが、今は「なんとはなしの日常」に思えるという。
 「予定調和とは真逆の世界がここにありますね」

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