ふくしまの10年 新天地にそよぐ風 ⑧帰還町民が集う夢の城

福島県楢葉町の交流館「ならはCANvas」(中央)。周辺には住宅や商業施設がある(本社ヘリ「おおづる」から)

 久しぶりに楢葉町を訪れた人は町の変貌ぶりに驚かされるにちがいない。
 震災前、役場の南側は一面の水田だったが、現在は復興住宅や分譲地、商業施設が並び、ひときわ目をひくモダンな建物も建っている。大きな正方形の屋根が特徴で、その下に収まる2層のフロアは外壁面はガラス張り。内部は中央が吹き抜けで、周囲も間仕切りはほとんどなく、どこまでも見渡せる。
 2018年7月に開館した「みんなの交流館 CANvas」。帰還した町民がサークル活動をしたり、バンドの練習をしたり、将棋をさしたりと、自由に使える空間になっている。
 西崎芽衣さん(28)、森雄一朗さん(25)らが働く町つくり会社「ならはみらい」は、ここに拠点を置いている。
 設計や構想の段階から関わった西崎さんには、特に思い入れが強い夢の城だ。
 「町の人の希望を少しでも吸い上げようと、立命館大のゼミの先生を招いてワークショップを開いたりしました」
 器は作っても人は集まるのか。当初はそんな不安も持ったが無用の心配だった。
 「あれをやりたい、これをやりたいと希望が殺到したんですよ」。避難先の仮設住宅で始めた絵手紙教室をここでも開きたいという人がいた。子どもたちが自習に集まってくるのを見て、勉強を教えたいという人もいた。
 「楢葉は何もない町ですが、なければ自分たちでつくるという気持ちの人が多い。そんな人と一緒に活動しているうちにつながりが生まれていきます」。それがこの町で働く醍醐味(だいごみ)だという。
 「もしも被災地に来ていなかったら、こんな出会いは決してなかったと思います」

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