1人で1日ガソリン9リットル燃やしてる? 暮らしで出る温室効果ガス<地球異変・温暖化のはてな>

 毎日の暮らしの中で、私たちは地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスをどれぐらい排出しているのだろうか。それを知れば、温暖化対策のために何をすればいいかを考えることができる。「地球異変・温暖化のはてな」の4回目のテーマは生活。とりわけ生きることに欠かせない「食」を通じた温室効果ガスの排出量について解説し、地球にとっても健康的な食生活という試みを紹介する。 (福岡範行)

「食」で2割 温室効果ガスを1人年間7.6トン排出

 牛肉や豚肉、家具や家電、自動車、水や電気も、日々の暮らしのためにつくられている。商品やサービスをつくったり、捨てたりする過程で、年間にどのくらい温室効果ガスが排出されているのか。
 日本の平均的な生活で出る1年間の温室効果ガスの量は、1人当たりCO2換算で7.6トン。ガソリンの使用量で置き換えると、3270リットル分余り(1トンで約430リットル分)。1日に約9リットルを使っていることになり、40リットル入る車を4、5日ごとに満タンにできる量だ。
 地球環境戦略研究機関(IGES、神奈川県葉山町)などの研究チームが推計し、消費を通じて出る温室効果ガスの量を分類して「1.5℃ライフスタイル」という報告書にまとめた。
 7.6トンの中身を見てみると、家の電気などの住居関連が3割、自動車などによる移動が2割と、これらで半分以上を占める。石炭など化石燃料による発電やガソリンの使用がすぐにイメージできるだろう。
 食生活を通じた排出も約2割と意外に多い。その内訳をみると、肉類の消費が23%で最多で、乳製品も13%。いずれも食べる量は少ないのだが、畜産業はえさの栽培やふん尿処理、温室効果ガスのメタンを出す牛のゲップなどを通じて、排出量が多くなっている。

肉をやめて、菜食に変えれば…0.3トン削減

 生活を通じて出る温室効果ガスを減らすには、どうしたらいいのか。IGESが検討した「脱炭素型の暮らし」に向けた選択肢には次のようなものがある。
 食生活を菜食にー。肉を一切取らない野菜や乳製品、卵中心の食事に切り替えると、温室効果ガスの排出量は年間1人当たり最大0.3トン余りを削減できる。食品ロスの削減よりも数倍の効果があるという。
 家の電気を再生可能エネルギーにー。太陽光や風力といった再生エネによる電気に切り替えることで、年間1人当たり最大1.2トン余りの削減が見込まれる。
 車を電気自動車(EV)にー。ガソリン車からEVに切り替えると、年間1人当たり最大0.5トン余り削減できる。買い物やレジャーなどの移動を全て公共交通機関に切り替えることでも、最大0.7トン余りの削減を見込めるという。
 ただ、産業革命前からの世界の平均気温の上昇を1.5度未満に抑えるという温暖化対策の国際目標を達成するには、2050年までに、1人当たりの年間排出量を0.7トンにする必要がある。現状の10分の1の排出量にまで抑えるには、全ての分野で大幅な排出削減が避けられない。

肉のように加工された大豆でつくった唐揚げ(ブイクック提供)

身体も地球も健康に 広がる「ビーガン」

 食生活を変えることは簡単ではないが、取り組んでいる人たちがいる。肉食を減らすことや、肉や乳製品を使わないビーガン(完全菜食主義、Vegan)の実践だ。欧米では専門のレストランやスーパーもあったりするなど、広がりを見せている。
 国際環境保護団体グリーンピースは、世界全体で2050年までに肉食を50%減らす「レスミート」の実践を呼び掛けている。目指しているのは、環境負荷が少ない畜産の実現だ。
 世界全体では人口が増え、肉の消費量も増加。放牧や家畜のえさの穀物を育てる土地の確保で森林破壊が起きている。フランスでは18年、試験的に週に1度、学校給食を菜食料理にする法律ができるなど、食事を見直す動きもある。
 厚生労働省の調査などによると、1日に必要とされる野菜の摂取量は成人で350グラムだが、日本ではどの世代でも不足している。グリーンピースの関根彩子さんは「健康的な食生活は地球の健康にもつながる」と話す。
 ビーガン料理を出す店は、日本でも増えている。ビーガン対応の飲食店などの検索サイト「Vegewel(ベジウェル)」では、専門店の登録数が年々増え、約360店舗に。一部でビーガン対応という店は、17年末から倍に増え、1000店に迫る。
 サイトの運営会社フレンバシーによると、東京五輪・パラリンピック開催に向け、外国人観光客の増加が見込まれることで、対応店が増えてきたという。

卵ではなく湯葉を載せたオムライス(ブイクック提供)

手軽にビーガン実践 神戸大生がレシピサイト

 「ビーガンのオムライスも作れるのに、それに気づけないと食べられない」
 神戸大4年の工藤柊さん(21)は19年7月、ビーガン料理専門のレシピ投稿サイト「ブイクック」の運営を始めた。レシピ数は約1400件、今では毎月3万人が閲覧する人気サイトだ。
 3年前、大学の友人が温暖化の心配などからビーガンを数カ月続けたが、「人とご飯に行けない。続けられない」と涙した。工藤さんは「誰かのため、将来のために行動を変えられる人が、つらい思いをしている」と、手軽に実践できる環境をつくろうと動いた。
 今年4月には休学をして、会社を設立した。8月10日、レシピ本「世界一簡単なヴィーガンレシピ」(税抜き2400円)を出版し、肉や乳製品を使わずに、肉などに多く含まれるタンパク質や鉄分、カルシウムを摂取する方法もまとめた。飲食店へのビーガンメニュー導入も支援し、裾野を広げようとしている。

ビーガン料理専門のレシピサイト「ブイクック」をつくった工藤柊さん(ブイクック提供)

温室効果ガスとは?

地表にとどまる赤外線を増やし、気温を上げるガスの総称。産業革命以降、人による排出が増え続け、地球温暖化が起きている。最も排出が多いのは二酸化炭素(CO2)で、2010年時点では世界の総排出量の4分の3を占めた。他は、温室効果がCO2の25倍ほどのメタンや、300倍近い亜酸化窒素など。CO2換算ではメタンが総排出量の16%、亜酸化窒素が6%ほどという。

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