ふくしまの10年 コットン畑は紡ぐ ⑮バトン受け継ぐ次の世代へ(最終回)

コットンを育む関係者が年1回開く報告会。例年は東京で開くが、今春はオンラインで開催

 NPO法人ザ・ピープル代表の吉田恵美子さん(63)のもとに今、結婚して米国に移住した娘ともうすぐ1歳になる孫が里帰りしている。新型コロナウイルスの影響を考えての判断で、住民票もいわき市に移した。
 その後、市から安定ヨウ素剤が送られてきて娘は動揺した。再び原発事故が起きて高濃度の放射性物質が拡散した時に備え、市が住民に配布している。原発という存在をあらためて突きつけられた。地域でオーガニックコットン(有機栽培綿)栽培を広める活動を続けてきた意味を見つめ直す機会にもなった。
 コットン畑に昨年12月、いわき市から京都に自主避難をしている人たちが収穫体験に訪れた。避難者を支援する団体の主催で、7月にも再びツアーが組まれ、別の避難者たちが訪れた。「福島に思いを寄せてくれる種になるのならば、私たちのやっていることは無駄ではない」と感じたという。
吉田さんのバトンを受け継いでくれる若い世代も育っている。栽培では渡辺健太郎さん(42)がいる。最初は災害ボランティアとして仲間に加わり、現在はザ・ピープルのコットン栽培チームのリーダーとして各地の畑で作業をし、ボランティアの指導にあたる。
 酒井悠太さん((37)が株式会社「起点」を作り、金成清次さん(38)とともにコットン製品作りを生業としてくれたことも吉田さんにとっては大きな喜びだ。復興支援が先細り、自分たちの活動が頓挫する日が来たとしても彼らの会社が残ると思うと安堵(あんど)する部分もあるという。
 「花が咲き、実を結んでいくような感覚は持っている。私の人生の中で一番濃い10年だったし、いい10年だったと思う」=おわり (早川由紀美が担当しました)

ご意見・ご感想は

メールで、fukushima10@tokyo-np.co.jp へお寄せください。

関連記事