ふくしまの10年 コットン畑は紡ぐ ⑫耕作放棄地…でも期待も

吉田恵美子さん(右)から古着の仕分けについて説明を受ける東日本国際大学の学生たち=いわき市で

 古着が山積みとなったいわき市内の倉庫で、NPO法人ザ・ピープル理事長の吉田恵美子さん(63)は東日本国際大学(同市)の学生たちに語りかけていた。
 「震災後は最初に倉庫からコートなどを被災者に届けました。地域の農家の人がダメージを受けているのが分かったので何かしたいと思って始めたのがコットン栽培です」。東日本大震災前から続けていた古着回収が現在の活動の原点となっていることを説明した。
 同大経済経営学部の河合伸教授のゼミの学生らが昨年から月1回、コットン畑の手伝いに訪れている。この日は雨だったため、古着の仕分けの作業となった。
 ゼミの学生の半分は韓国やネパールからの留学生。昨年は思いがけない展開も生まれた。「畑仕事の後、木製の道具を使って糸紡ぎの体験をさせてもらった。ネパールからの留学生で上手な子がいて、母がやっているのを見て育ったということだった」(河合教授)
 留学生たちによると、ネパールの家庭では朝晩、油の入った器に、綿を紡いだ芯を入れて神様の前でともすという。お祭りでも使う。昔は各家庭で衣類を作っていたため糸紡ぎなどの道具があり、自分たちで芯も作っていた。今は高齢者や主婦が内職仕事として芯を作っている。
 道具の存在も忘れられ、内職はすべて手で行うため逆に時間が掛かるようになった。吉田さんが発案し、ネパールの女性たちに糸紡ぎなどの道具を贈って、昔の文化を復活し、仕事を後押ししようという話になった。現地でワークショップをする計画もあったがコロナ禍の今は難しく、インターネットを使って交流することも模索する。
 時に海を越えて人をつなげる。紡がれる存在のコットンには、紡ぐ力も備わっている。

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