ふくしまの10年 コットン畑は紡ぐ ⑩被災の家で広がる輪

鈴木澄子さん(右)、京子さん母子。昨年の台風19号で被災した=いわき市で

 昨年10月の台風19号の大雨による浸水で、いわき市では百棟以上が全壊するなど大きな被害が出た。平窪地区に住む鈴木澄子さん(85)、京子さん(61)母子が住む築120年の木造家屋とオーガニックコットン(有機栽培綿)畑も水びたしになった。
 近くの夏井川の堤防が決壊し、近所の教職員アパートに避難した。翌朝帰ってみると家中泥まみれで畳もめくれ、冷蔵庫はひっくり返っていた。6月末に鈴木さん宅を取材で訪れた時には、まだ床は板がむき出しになっていた。被災した家が多すぎて、大工の手が回らないという。「3・11で大規模半壊になり、修繕した家が今度は半壊で…」
 10年ほど前、夫を亡くした京子さんは実家に戻り、まもなく東日本大震災が起きた。吉田恵美子さん(63)=同市=がコットン栽培を広げていることを市役所に置いてあったパンフレットで知り、仲間に加わった。台風で被災した時は吉田さんやボランティアなども家の片付けに駆けつけた。
 鈴木さん母子は支える側でもある。取材に訪れた時に、ちょうど遊びに来ていた勝俣節子さん(64)=東京都江戸川区=の父親は鈴木さんの野菜畑の一部を借りている。「うちは本当に鈴木親子に救われた」という。浪江町請戸の実家が津波で流され、弟一家と両親はいわき市に移住した。
畑で野菜の世話をしていた澄子さんに、勝俣さんの父親が「畑をやりたい」と声を掛けた。「家の中ばかりにいるのは辛いと思う。皆が元気になれれば」(京子さん)。
 鈴木さん宅は明治時代に地域で八軒が燃える火災があった時に建て替えられた。大火や地震、台風…。波乱の一世紀余を耐えた家には、支えたり支えられたりの豊かな時間も刻まれている。

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